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レフェリーインタビュー

氏名 シャンタレ・ジュリアン Chantal JULIEN
年齢 42歳 (1964年生)
国際公認取得年 1997年
国籍 フランス
主な参加大会 アテネ・オリンピック(2004年:ファイナル、日本対ギリシャ)、FIBA女子世界選手権(2006年:ファイナル)、ヨーロッパ選手権(2003年、セミファイナル)、アジア競技大会(2002年:ファイナル、2006年:準々決勝)


氏名 エレナ・チュルノワ CHERNOVA Elena
年齢 34歳 (1972年生)
国際公認取得年 2003年
国籍 ロシア
主な参加大会 FIBAワールドリーグ(2005年:3位決定戦)、FIBA女子世界選手権(2006年:順位決定ラウンド)


「トップレベルのジャッジを経験し、競技力向上を目指すことを目的」として、2人の外国人国際審判員が招聘された今回のWリーグファイナル。主審を務めたフランスのシャンタレ・ジュリアンさん(42歳)は国際審判員として10年のキャリアがあり、アテネ・オリンピックのファイナルをジャッジした経歴の持ち主。副審を務めたエレナ・チェルノワさん(34歳)は国際審判としてキャリア4年目の注目の新鋭だ。Wリーグファイナル第3戦が終わった翌日の休息日、両レフェリーが見たWリーグファイナル、日本のバスケットボール、そして国際審判員として心がけていることを聞いてみた。

どんなレベルの大会でも、
いつでも同じ判定基準でジャッジし、
自分自身を強く持つことが大事
――シャンタレ・ジュリアン



女性がスポーツ審判をしているのが
普通に見られるような、
そんな将来が来ることを願いたい
――エレナ・チェルノワ



――ここまでWリーグファイナルを3戦ジャッジしてみての感想をお聞かせください。

シャンタレ・ジュリアン(以下ジュリアン) 最初のゲームはとてもいいゲームだったですね。2戦目はちょっと点数が離れてしまいましたが、3戦目はディフェンスがしっかりしていたし、競っていて見応えがありました。明日の4戦目もそのようなゲームになると期待していますし、5戦目まで行けばWリーグのレベルはもっと上がっていくでしょう。

エレナ・チェルノワ(以下チェルノワ) 3ゲームともそれぞれ特徴があって、まったく異なるタイプのゲームになっています。おそらく「もう一度やれ」と言われても再現できない内容ですね。富士通は3ポイントがよく入り、シュート力があります。JOMOは3戦目で背の高い選手(山田久美子選手)が非常にいい活躍をしていました。JOMOは若いチームと聞いています。この若い選手たちが、試合をやるたびに変わっていくのが興味深いです。明日の4戦目はどちらのチームも「勝たなきゃいけない」という気持ちを持って臨むので、エキサイティングなゲームになるでしょう。

――ジュリアンさんは過去に国際大会で日本の試合をジャッジしたことがありますが、日本の女子バスケットボールの技術やレベルをどのように見ていますか?

ジュリアン 日本の選手たちは審判の判定に敬意を示してくれるし、受け入れてくれるので、ジャッジできることが光栄ですし楽しみにしています。また、アジアの中でも日本は3ポイントがたくさん入るし、動きが俊敏で独特のバスケットボールをしているので、とても興味深いです。レベルも上がってきているのではないでしょうか。

――日本の場合は審判を兼ねながら本職を持つケースが多いのですが、お2人が国際公認審判になられた経緯と、国際審判のほかに職業に就いているのでしたら教えてください。

ジュリアン 私はフランスの1部リーグで10年間プレイしたあと、審判の道に入りました。国際審判になって今年で10年になります。選手として高いレベルでプレイしていた経験が今の審判活動に生きていて、プレイヤーだった10年間がかけがえのない大切な時間になっています。現在の職業としては、日本でいう小学校にあたるところで子どもたちにスポーツを教えています。子どもたちにバスケットボールとはまったく違うスポーツを教えたり、子どもたちと触れ合っていることは楽しいですよ。どちらの仕事も自分にとっては充実しています。

チェルノワ ロシアリーグのモスクワ近郊にある2部リーグでプレイをしていました。1部リーグからも何チームか誘いはあったんですが、モスクワから離れたくなかったので、モスクワでプレイできる2部リーグを選びました。プレイヤーとして活動したのち、3年間コーチもしましたし、その後は、バスケットボールの試合で内容を伝えるコート・アナウンサーをしたりしまた。その後、数年前からロシアバスケットボール協会に所属し、国際関係の仕事を担当しています。昨年からは仕事が変わりまして、現在はユース代表のマネージャーをしています。ユースチームを統括する立場です。

――日本ではトップリーグ(Wリーグ)でプレイしたあとに指導者になる人はいても、審判になる人は少ないです。お2人はなぜ審判の道を選んだのですか?

ジュリアン ヨーロッパでも日本と状況は変わりません。プレイヤーを辞めたあとはコーチになるか家庭を持つ人は多いですけど、審判になる人は少ないですね。私はプレイヤーから審判の道に進みましたが、審判の道になることを受け入れるプレイヤーは多くはないでしょう。でも、私は審判の道に進んだおかげでいろんな人に出会えましたし、審判活動でいろんな国際活動ができたり、コーチや選手とは違った角度でバスケットボールを見ることができて、いい経験をしていると思います。私が審判の道に進んだ理由の一つは、高いレベルのバスケットボールに関わり続けたいということがあります。コーチは60歳になってもできるけれど、審判は体を鍛えて体力がある今しかできないのです。

――チェルノワさんは珍しい経歴をお持ちですが、最終的に審判になったのには理由があるのですか?

チェルノワ プレイヤーを引退したあと、とにかく、どんな形でもいいからバスケットボールに関われるように、常にそういった意識で活動していましたね。それがコートアナウンスや、バスケットボール協会の仕事につながっていったのだと思います。現在は審判という仕事に誇りを持っています。

――試合をジャッジする時、自分自身心がけていることは何ですか? 

ジュリアン コートの上で楽しむことと、審判としてのプロフェッショナリズムを見せること。それを常に保つことが一番大事だと思っています。私としては国際大会への推薦はうれしいものですが、国際大会でも、小さな大会でも、決勝でも予選でも、どんなに力の差のあるゲームであっても、いつも変わらずにコート上で表現することが大事だと考えています。得点差が開くようなゲームでも、1点を争うゲームでも、いつも同じように、同じスタイルで、同じ判定基準で、同じように笛を吹くことです。

チェルノワ 審判というのはゲームでの権限が与えられ、コート上を仕切るわけですが、いつどんな時でも自分自身を表現できることが一番大切なことだと思っています。また、国際審判員として参加する時に一番に心がけていることは、国の名誉を背負って参加していることを誇りに思うこと。2つ目は女性審判員として任命を背負っていることを意識すること。3つ目に自分自身というものをコートで表現できるかどうか、というのを大切にしています。今言いました「女性審判員」ということに関しては、私が活動している時に「女性らしいな」と思われていることはあるでしょうが、ジャッジそのものに女性らしさを出そうとか、女性としてジャッジをしているんだと意識してやっていることはありません。女性がいろんなスポーツを審判するのが普通に見られるような、そんな将来が来ることを願いたいという意味です。

――今回のように女性3人の審判団で、トップリーグのファイナルをジャッジすることは珍しいケースだと思うのですが、実際にゲームを吹かれてみて感じたことはありますか?

ジュリアン 私の今までの経験でもこのようなことは初めてです。その点でヨーロッパより進んでいるといえますし、こういう機会を大切にしたいですね。私が審判をする時に気をつけていることの一つに、一緒に活動するパートナーといい関係を築くということがあります。私と審判団を組むことに喜んでくれる人もいますが、やはり女性の審判と一緒にやることや、女性の審判がクルーチーフとなることを立場的に受け入れられない方もいるようです。パートナーによっては、(審判の技量としての)レベルの違い、考え方の違い、フィーリングについての違い等がありますので、そのことが試合を行う2チームに影響しないようにすることが大事です。毎回違うパートナーと組んでも「自分自身でいる」ということを大切にして、自分の求める審判活動ができるように心かげています。今回、祥子さん(須黒氏)と陽子さん(富田氏)、チェルノワさんと審判団を組めたことを光栄に思いますし、技術的に向上できるように、同じ考えを共有できたことはいいことだったと思います。

――ジュリアンさんはアテネ・オリンピックで日本対ギリシャの試合を吹かれていますが、ゲーム内容を覚えていますか? 覚えていればその試合の感想をお願いします。

ジュリアン ええ。もちろん覚えています。地元のギリシャと決勝トーナメント進出をかけた大変白熱したゲームでした。今回のファイナルを戦っている赤いユニフォームの富士通の12番の選手(矢野良子選手)がラストショットで3ポイントを打ったんです。これが入れば日本が勝っていたのですが、残念ながら入りませんでした。とてもエキサイティングなゲームだったので、よく覚えていますよ。こういったビッグゲームを経て、日本は向上していくのではないでしょうか。私がアテネ・オリンピックの決勝(アメリカ対オーストラリア)に指名されたのは、この試合でのジャッジが評価されてのことだと感じています。

――最後に、これから国際審判の資格を目指す人たちにアドバイスをお願いいたします。

ジュリアン 一番大切なことは、バスケットボールを知ることではないでしょうか。最初は審判でなく選手としてでも構いませんし、指導者としてでも構いませんが、そこで勉強したことを審判として生かせるように、バスケットボールを知ることが大切だと思います。2つ目は自分自身というものを強く持つこと。自分が考えていることを自分の中に閉じ込めておくのではなくて、正しく表現できるような強い人間性を持つことが大切です。3つ目はどんな現場で審判をしても、いつも通りの自分でいるといった強い精神力を養うことが必要だと思います。また、自分がミスを犯してしまった場合は、それを自分自身で受け入れられるようになることが大切だと思います。自分のミスを受け入れ、その次にはミスをしないような工夫や努力をすること。そのことが、さらに審判技術を向上させていくと思います。

チェルノワ 一番大切なことは、バスケットボールを好きになること。その次はバスケットボールに関わり続けることが大事です。また、当然のことだけど体力的なことで、いい運動能力を維持すること。また私はこう思うのです。いつも何か向上できると考えていることが大切なのではないでしょうか。ギリシャの哲学者の言葉に「かつての私は何も知らなかったということに、ようやく気がついた」という言葉があります。自分が今、どういう位置にいる、自分には知らないことがある、ということを意識しながら、常に新しく、常に上を目指すことが大切ではないでしょうか。私もこれからも高い意識を持ち、オリンピックの舞台に推薦されるような審判を目指したいと思います。


 



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