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2021年5月18日(火)特集

[特別企画]Wリーガーからボートレーサーへと転身―宮崎安奈インタビュー



Wリーグでプレーした後、セカンドキャリアとしてボートレーサーを選んだ選手がいる。

それが20172019年と2シーズン、新潟アルビレックスBBラビッツでプレーした宮崎安奈だ。521日にはボートレーサーとしてデビュー予定の彼女に、新たな挑戦について話を聞いた。

 

――まずは、ボートレーサーを目指したキッカケを教えてください。

11年間バスケットをして、引退直後は(スポーツとは関係ないところで)普通に働こうと思っていたのですが、父からボートレースという競技があるけれど、一度挑戦してみないかと言われて。最初は乗り気ではなかったのですが、これもキッカケかなと思い、家族とも話合って決めました。(ボートは)一度も見たことがなかったので、最初はどんな競技か想像も付きませんでした」

 

――一時は悩んだということですが、最終的に挑戦を決めた大きな理由は何だったのでしょうか?

「姉(早織/ENEOSサンフラワーズ)の存在が大きいです。姉が活躍しているので、違うスポーツにはなるのですが、もう一度姉と同じ高いレベルまで行きたいと思い、覚悟を決めました。スポーツをしている姉や兄を見て育ってきたので、闘争心や負けたくないという気持ちはどこかでまだ残っていたのかなと思いますね」

 

――改めてボートレーサーになるための過程を教えてください。

「養成所で1年間訓練を受け、養成所を卒業できたら選手になれるのですが、養成所には13次試験を合格しないと入れません。養成所でも決して全員が卒業できるわけではなく、試験に合格しないと次に進めないので、そういった中で1年間を過ごし、残った人たちが選手になれます」

 

――1年間の養成所でボートレースに関する基礎知識や技術等を身に付けるのですね。

「何も分からないまま入ったので、最初の半年間は付いていくのに必死でした。大変な訓練もあるので、それを乗り越えるのはすごくしんどいし、家族ともそんなに連絡を取れないので、精神的に苦しい時もありました。全員が未経験で養成所に入って1年間を過ごすのですが、最初は自分のことをオープンにできず、一人で悩んで考えてという時期はきつかったです」

 

――その中でバスケットボールでの経験が生きていることはありますか?

「同期はいますが、みんなライバルになるので、負けず嫌いな性格が生かされているかなと思います。それと、バスケットはコミュニケーションを取る団体競技だったので、割とすぐにいろんな人と打ち解けることができたのは、強みだったとも感じます」

 

――動きや体の面などでバスケットの経験が生きていることは?

「(バスケット同様に)体幹は強い方がいいし、ボートに乗っている時の体の使い方は少し似ているところもあるのですが、それ以外は全く違います。ただ、モーター運搬に関しては、(バスケットで)筋トレをしておいて良かったかなと()。バスケット選手の時と比べたら筋肉はだいぶ落ちましたね」

 

――ボートレーサーは体重が軽い方が良いと聞きます。体重を減らす苦労はありましたか?

「体重を減らすことは苦労しました。(食事制限をして)自分の体調管理をすることが結構大変でしたね」

 

――ボートレースのスピードは体感で時速130kmだそうですね。

「最初にボートに乗った時は『本当に乗れるのかな』と思うぐらいハンドルを握るのもできなくて。ただ、乗っていくうちに、スピードも怖くなくなりました」

 

――レースではスピードのある状態で相手の位置や自分の状況、それに伴う技術面での動きなどを一瞬で考えないといけないですよね。

「はい。瞬間ですぐに判断しないといけないので、止まっている時間はないですね。バスケットだと攻める時は攻めること、守る時は守ることと、分けて集中することができますが、ボートレースは両手を動かしている中で頭でいろいろと考える。少ないように見えるのですが乗っている時はやることもすごく多いんです」

 

――そこに天候の影響も加わりますよね。

「バスケットボールはコートの上で自分のやりたいように動けるのですが、水面となると自分の思っていることと(実際に)やっていることが一致しない時もあります。それに自分だけでどうにかなるものでもなく、ボート、モーター、プロペラが一致しないといけない。私はまだ新人なので、(ボートの)整備もこれからもっと学んでいきたいと思っています。養成所でも整備の練習はするのですが、(車なども含めて)整備などをしたことがなく大変でした」

 

――デビュー戦(521日)を目前に控えた今の心境を教えてください。

「ワクワクな気持ちもあるのですが、不安や緊張も同じくらいあります。私はそこまでデビューが早いわけではないのですが、ここまで先輩方とたくさん練習ができ、またそういった環境を作っていただいたので、ありがたいという気持ちとデビュー戦に向けてもっと上手くなりたいという思いがあります」

 

――セカンドキャリアとしてボートレーサーの道へ。他競技を挑戦して感じることはありますか?

「幅が広がりました。私はずっとバスケットしかしてこなくて、バスケットしか知らないのですが、違う種目に挑戦し、たくさんの人と出会い、知らなかったことを知り、いろんなことを吸収しました。挑戦することで失うものはない、得るものしかないと感じています。だから後悔は一つもしていないですし、むしろ挑戦して良かったという気持ちの方が大きいです」

 

――元バスケット選手として注目される中での挑戦ですね。

「自分でやると決めたことなので、『簡単にはくじけない』と思っています。バスケットボール以外でも活躍できるということを見せたいですし、これから何をしようか悩んでいる人たちにボートレーサーの魅力を伝えることができればいいなと思っています」

 

~姉・早織からのメッセージ~

ボートレーサーになると覚悟を決めたことはすごいと思っていますし、違うスポーツだけれど『頑張る』ということは互いに変わらないので、刺激になります。自分の夢を一度諦めたけど、また違う夢に向かっていることは誇りです。ケガなく頑張ってほしいですね。結果を求められると思うけれど、私的には、今は結果ではないかなと思うので、自分が思うように自信を持ってレースをしてくれたらそれだけでうれしいです。

 

インタビューの様子、宮崎姉妹のオンライン対談やデビュー戦の模様は『バスケットLIVE』にて公開予定です。