NEWSニュース

2007年6月1日(金)特集

スタミナ健在!富士通のベテランシューター

矢野 優子選手(富士通 レッドウェーブ)

矢野 優子

今回のゲストは富士通の矢野優子選手。JOMO(所属当時ジャパンエナジー)、トヨタ自動車を経て、昨シーズンから富士通に移籍したシューターです。同じ富士通の矢野良子選手とは、仲の良い姉妹としても有名です。今年32歳ながら年齢を感じさせない軽やかな動きと、走力を兼ね備えた選手として、息の長いプレイヤーとして活躍。クイック・モーションから放たれる3Pシュートは天下一品です。矢野優子選手にJOMOと5戦までもつれた激闘のファイナルのこと、現役生活を長く続ける秘訣などをうかがってみました。

——まず、3月のファイナルのことからお聞きします。5戦までもつれた末の惜しい敗戦だったのですが、優勝するには何が足りなかったと思いますか?

1、2戦目に勝つことができて、そのあとJOMOは富士通の対策をしてきたんですけれど、私たちは対策をされてから、残りの3戦をズルズルと戦ってしまったかな……。JOMOがこう来たから、うちらはこう対策しようというのがなかったですね。うちはリーグ戦では自分たちのバスケをやって勝ってきました。リーグ戦では2戦やって次の週は違うチームが相手だから良かったんですが、ファイナルは5戦連続。だんだんと相手も慣れてきて、そこで何か違うことを仕掛けていれば、自分たちに勝利が来たのかな、とも思います。

——富士通としては初のファイナルでしたが、どんな気持ちで臨みましたか?

JOMO時代のファイナルは途中から出るので流れを変えちゃいけないとか、先輩たちに迷惑をかけちゃいけないとか、そういう思いからアップの時から緊張していたのですが、富士通では自分がスタートで出る立場にいても、アップの時からリラックスしていて、ファイナルという感じが全然しなくて、リーグ戦の一戦という感じで戦えたのは良かったと思います。選手はみんなそんな感じでした。

——自分自身のファイナルの出来はどうでしたか?

自分としてはもっと試合に出たかったです。3戦目に下げられてもしかたないようなミスをしてしまって、そこからいい出番がなかったです。チームの足が止まった時に交代して、そこで仕事ができればと思ったんですが、結局、そのあとは声がかからなかった。だから4戦目で頑張ろうと思ったんですけど、でもダメな状態が最後まで続いてしまったので、自分的には納得がいかなかったです。みんなの足が止まった時に、自分は元気だったから試合に出てつなぎたいというのがあったんですけど、5人の流れがあることだから、それはしかたないです。そこで出られないのなら、来シーズン頑張るしかないという思いです。

——ファイナルで5連戦してみると、一発勝負のオールジャパンとはまた違う駆け引きが必要だということがわかりますよね。ファイナルを経験して得たことも多いのでは。

そうですね。ファイナルが終わってからみんなと話したのは、オールジャパンはオールジャパンで優勝してうれしかったし、楽しかったけれど、ファイナルは長いリーグを戦って2チームしか出られない。その場に私たちが出ている。限られたチームしか出られないファイナルに出たことはいい経験になったね、と。これを次に生かしていこうと。

——それで、スタメン5人とも今シーズンも続ける決意ですね。

はい。負けた悔しさがありますから。今シーズンの練習が始まりましたが、スタメンだったベテラン勢は合流が遅くてよかったんですが、5月上旬から軽く体を動かしたり、みんなけっこう早くから合流しています。6月からは全部の練習に参加することになります。

——富士通に移籍して1シーズンが終わりました。どんな手ごたえがあったシーズンでしたか

すごく早い1年でしたね。今までJOMOやトヨタでは「やらなくっちゃ」という気持ちの中で常に緊張していた感じがあったんですけど、富士通はチームの雰囲気がすごく良くて、いい意味で力が抜けているというか、リラックスして試合に入れたのがありました。途中から自分らしい試合ができて、ブレイクや3Pが出せたと思います。

——30歳を過ぎると、普通は体力的にも落ちていくものですが、矢野選手のプレイを見ていると、体が軽いし、すごく走れますね。

それはJOMO時代、若い時に厳しいトレーニングをしたし、ご飯をすごく食べてスタミナをつけたからです。若い時に苦しい思いをたくさんしたので、体力と持久力がものすごくついたんです。マックさん(浜口典子、JOMO→アイシンAW)もそうですよね。あとは基本的に走るのが好きなんです。体力的に落ちたと思う時はあります。でも、今までのトレーニングの蓄積でカバーしています。

——これまで、大きなケガや手術をしたこともないのでは。

そうなんですよ。足にテープも巻かないし、サポーターもしていない。予防もそんなにしなくてもいいほうなんです。体が元気なことが取り柄ですね(笑)

——今シーズンの課題と目標を聞かせてください。

うちのチームには若くて有望な選手がたくさんいるので、その子たちに走り負けしないこと。3Pの確率を上げること。そして、優勝に向けて自分のできることを頑張ってやっていきたいです。ファイナルでは一番最悪な経験をしたので、今シーズンはその反省を生かして優勝を狙いたいです。

質問コーナー(ホームページに寄せられた質問にお答えします!)

●JOMO、トヨタ、富士通と移籍しましたが、そのたびにチームに慣れるのは大変でしたか?

JOMOは高校を卒業してはじめてのチームだったし、名門で厳しくやっているので大変でした。次のトヨタは環境の面での変化が激しかったのと、2年目に丁ヘッドコーチがいらして、そのバスケットに慣れるのが大変でした。でも、富士通は全然大変じゃなかったんです(笑)。私が最年長なんですけど、妹(良子)がいたのもあるし、みんなが気を遣ってくれたのですぐに慣れました。チームのムードもすごくいい。移籍してきて本当に良かったです。

●矢野選手は30代ですが、現役を長く続ける秘訣は何ですか?

バスケットが好き、もっとうまくなりたいという情熱が一番なのと、私の場合は、秘訣というより辞めるのが怖いんですよ。辞めたあとに「もう少しやっておけばよかった」と後悔するのが怖いから、「あと1年、もう1年…」となるんですね。以前は30歳まで現役でいたいと思い、30歳になったら33歳までと考えていたけれど、この調子でいけば、あと2〜3年はできるかな。まぁ、今後のことは、その時の体の調子とモチベーションで決めます。

●矢野選手は3Pを打つのが速いのですが、クイックモーションのコツを教えてください。

速く打つコツは、シュートを打つ前に準備をしっかりしておくことです。ボールを持っている人と周りの人の動きを見ながら、自分のタイミングでボールをもらえるように呼び込んだり、いいコースに思い切り走り込んだりして、チャンスを作っていきます。その時はいつでも打てる体勢なんです。そうすれば、ボールをもらった瞬間はリングを見て打つだけ。ボールをもらってから構えるのでは遅くて、ボールをもらう前に自分が打つタイミングを作ること。ボールを持った時は手からボールを離すだけにしておきます。

●休日はどのように過ごしていますか?

シーズン中は試合の翌日が休みなので、その時は洗濯と掃除をします。遠征で部屋を2日間くらい留守にしているから、フローリングやテレビのほこりを取ったり、隅々まで掃除します。かなり綺麗好きと言われますね。そのあとに部屋でゆっくりするか、良子から誘いがあればどこかに出掛けます。シーズンオフは良子と一緒に実家に帰ったり、今まで会えなかった友達に会ってますね。妹と母と温泉に行ったりすることもありますよ。

●妹の良子さんとはどんな姉妹ですか?

普通だと姉が「ついて来い」って感じじゃないですか。私たちは逆(笑)。良子のあとを私がついていく(笑)。買い物も食事もしょっちゅう一緒に行くし、友達みたいな感じです。3歳違いで中学も高校も入れ替わり。JOMO時代は突然一緒になったので、どう接していいかわからなくて距離は置いてたんですけど、今はすごく仲がいいですね。2人の中で担当があって、良子はオシャレ担当。センスがいいので買い物に行くと服をコーディネートしてくれるんですよ。私はグルメ担当。「今度ここに食べにいこう、このお店がいいらしいよ」とチェックする人です(笑)

構成/小永吉陽子