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2017年3月9日(木)特集

三度の大ケガを乗り越えてチームを牽引コアラーズの心強いキャプテン!

櫻木 千華選手(三菱電機 コアラーズ)

櫻木 千華

今回のゲストは三菱電機のキャプテン、櫻木千華選手です。今シーズンはレギュラーシーズン4位に躍進。プレーオフではケガ人が出てクォーターファイナルで敗れたものの、今後の可能性が見えたシーズンとなりました。その若いチームを率いたのが櫻木選手。181㎝の高さとディフェンス力を買われて2013年に日本代表入り。アジア選手権でも持ち前のディフェンスで存在感を示し、43年ぶりとなるアジア制覇に貢献しました。しかしその後は、度重なる膝の前十字靭帯断裂に見舞われてリハビリ、トレーニングの繰り返し。今シーズンにようやく万全なコンディションとなり、シーズンを通してシックスマンとして活躍し、チームに活力を与えました。三度にわたる前十字靭帯断裂を乗り越えたこと、そして今シーズンの躍進について聞きました。

——今シーズンより指揮を執る古賀京子ヘッドコーチのもと、若いチームが飛躍しました。キャプテンとしてどのような手応えを感じていますか。

ヘッドコーチがリクさん(古賀京子HC)に変わり、やる内容はこれまでと変わってないんですけど、リクさんがすごく細かいところまで追い込んでくれるので、自分たちの力で乗り越えていけるようになり、試合で我慢ができるようになりました。試合を重ねるごとに個人個人が成長したことで、チーム力がついたのを実感しています。

——細かいところというと、具体的にはどういうところですか?

いちばんやってきたのはリバウンドです。リバウンドを取れば勝つということで、それを実戦するためにリバウンドの練習をとことんやりました。選手たちからしたら身体は痛いし、ぶつかり合うのはいやだし、でもリバウンド練習をこなすことによって、強い相手に立ち向かう力がつきました。試合中も「リバウンドだよ」と口にしてやれるようになりました。

——個人的な出来はどうでしたか?

ずっとケガが多かったので、春先から練習できたのが久々なんですね。コンディションが戻ってきたので、まずそれがうれしかったです。キャプテンとしてチームをまとめることを求められたので、どんなに自分が悪くても声を出したり、チーム第一でやっていくことでみんながついてきてくれて、それが自分の力になっていき、決めるべきところでシュートを決められた手応えはあります。周りの力もあって、自分も成長できたシーズンでした。

——ケガのことをおうかがいします。櫻木選手はこれまで三度、膝の前十字靭帯を断裂しています。この大ケガから復帰できたことは多くの選手の励みになると思います。三度の怪我からの復帰までの道のりを聞かせてもらえますか。

一度目は高校3年のウインターカップの時で、左膝の前十字靭帯を断裂。その後にコアラーズに入り、リハビリをして復帰しました。

二度目ははじめて日本代表に選ばれてアジア選手権で優勝したあとです(2013-2014シーズン)。日本代表で自信をつけて、これからもっと上に行けると思った矢先のケガでした。そういう調子のいい時こそケガが起きるようで…JX-ENEOS戦に勝った試合(2013年12月15日)で今度は反対の右膝の前十字靭帯を切りました。

——二度目の断裂は、「さあここから!」という時のケガだったので、精神的に大変だったのではないですか。

その時はケガしたことのショックより、JX-ENEOSに勝ったことのほうが大きかったです。だから2回目の断裂でもショックというよりは、「まだまだ自分は頑張れる」と思ったし、このケガでもう一回自分が大きくなれると思いながらリハビリをしていました。前に同じケガを経験していた分、リハビリでどこを強化していけばいいかわかっていたし、トレーナーさんと相談しながらトレーニングをしました。

——しかしその後にもう一度、膝をケガしてしまうことに。3回目は2014-15シーズンに復帰した年のケガでした。

復帰はしましたが、内側を痛めていて、力は弱っていたんですね。自分でも試合に出たかったし、チームも出したいということでやらせてもらいましたが、二度目にやった同じ右膝の半月板を痛めました。でもその時は痛いとも感じず、前十字を切ったという感じもなく、ただ半月板を痛めたかな…という程度で、検査をしても前十字を切ったことはわかりませんでした。半月板を手術した時に、前十字が切れててることがわかったんです。その2日後に前十字靭帯の手術をしました。

その時は慣れといったら変ですけど、3回も切ってしまって、どれだけ自分が未熟なのかがわかりました。トレーナーさんと相談してトレーニングをしてきたつもりですけど、それでもまだ足りなかったんです。だから、3回目の時はすぐに復帰できるように、術後からすぐにトレーニングとリハビリに取り掛かりました。

——日本代表ではディフェンスを評価されてアジアの優勝に貢献。仲間たちが世界選手権やオリンピックの舞台を争っていることに関しては、どう感じていましたか。

日本代表の活躍は悔しくもあったんですが、励みにもなりました。同世代の代表組が活躍していることで、自分もまだまだできると感じていたので、自分ではそれが力になって、早く復帰したい一心でトレーニングをやっていました。過去の経験上、復帰するにはどこの筋力をつけて、何が必要で、これまで何が足りなかったのかは十分にわかっていたので、3回目は焦らないし、慌てないで、トレーナーさんの指示を受けて、これまで以上に、地道に一人でトレーニングをやっていました。

——三度目の断裂から完全に復帰したのが、昨シーズン(2015-16)のリーグ後半でした。

クォーターファイナルに向けて、徐々に復帰していく計画でした。三度目の復帰では、当たり前のことですけど、ウォーミングアップからしっかりやって、補強運動を欠かさずやり、自分の身体と向き合うことができました。本当に焦らず、慌てずにリハビリをしてきたので、次のシーズン(今シーズン)に頑張ろうと思って終わることができました。

——そして迎えた今シーズン。もう膝の状態は万全なのですか?

はい。やっと自分の身体になったという感じがします。

——クォーターファイナルではエースの渡邉(亜弥)選手がケガをしてしまい、デンソーに2連敗を喫してしまいましたが、振り返るとどんな試合でしたか。

1戦目の3クォーターに渡辺選手が膝を痛めてしまい、その試合は踏ん張ることができず、次の日は大事を取って出場しませんでした。池谷(悠希)選手も肩をケガしていたので、スタート2人がいない状態でした。チームのエースがいないことは初めての状態だったので不安はあったのですが、エースがいないから負けるとは誰一人として思っていなくて、今までそこに頼りっぱなしだったので、逆に自分たちでやってやろうという気持ちで戦いました。

ゲームの入りは自分たちの気持ちが勝っていて、それがリバウンドやルーズボールに現れていたと思うんですが、後半に入って受け身になってディフェンスから崩れてしまい、そこで自分が引っ張ることができなかったのがいけなかったと思います。

——今シーズンは開幕からシックスマンという新たな役割で存在感を示していましたが、自分自身の評価は。

スタートで出たい気持ちもありましたが、日本代表でシックスマンの経験もあり、シックスマンの大切さもわかっていました。スタートはアップの流れから試合に入ることができるけれど、シックスマンは流れを変える役割なので本当に難しい。けれどリクさんから「シックスマンは経験がある選手じゃないとできない」と言われ、「チームのためならシックスマンで頑張ろう」と思えるようになりました。実際にやってみると、流れを変える楽しさがわかり、今までにはない新鮮でやりがいのある経験ができたと思います。

——今シーズンはケガから復帰して、プレー面でも主力となり、キャプテンとしても若いチームであるコアラーズをまとめ、手応えのあるシーズンだったのでは。

ミニバスからやってはじめてキャプテンだったのですが、ヘッドコーチがリクさんに変わり、すごく話しやすい部分もあって、選手同士でも意見をお互いに言い合いましたし、選手に助けてもらいながらやれました。キャプテンとしてはチームのためになれたし、信頼を受けられたと思うので、やっていて良かったなと思えるシーズンでした。ケガから復帰してシーズンを通してやれたことも、リハビリをしっかりすればやれるということを見せられたかなと思います。あとは勝負の試合で勝つこと。今シーズンの経験を次に生かしたいです。


インタビュー&構成/小永吉陽子