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2004年12月1日(水)特集

チーム一新した富士通のキャプテン。「今年は大変だけど、覚悟できてます」

船引 かおり選手(富士通 レッドウェーブ)

船引 かおり

今回のゲストは、2年連続富士通のキャプテンを務める船引かおり選手。札幌山の手高校時代からオールラウンドなプレイが光り、名門・愛知学泉大でポイントガードにコンバートして花開いたプレイヤーです。ニックネーム「シップ」が示すように、船の舵取りのごとく、ゲームメイクやディフェンス面での存在感は抜群。インタビューの受け答えも快活で、責任感の強さを感じさせます。今シーズンは相澤選手の移籍、山田選手の引退と大黒柱が抜けたものの「自分に厳しく、他人に厳しく」との覚悟でチームを引っ張る船引選手に、一新したチームの様子、今後の目標などを聞きました。

——キャプテンの目から見て、現在のチームの調子はどうですか?
 
今シーズンはメンバーが半分くらい入れ替わったり、WJBLを経験していない選手もいたりで、リーグ戦というものがどういうものか分からない人がいたことが、かなりネックになっていました。練習をやっていても厳しさがなくて、何となく練習をこなすという感じだったんですね。「それだとゲームでは使えないよ」と口で言っても、何となくは分かるけど、何となく分かっていない。それで実際に負けが続いたので「やっぱりこのままじゃいけない」と分かり始めて悩んでいたのがちょっと前の時期ですね。じゃあ勝つためにはどうしたらいいのかと、チームや個々で話をしたり、リーグ戦というのを肌で感じてきたりして、やっとチーム的にもっとやらなきゃという気持ちになってきて。それが勝ちにもつながってきて、いい方向にもつながってきているかなと。それが今の状態です。

——逆を言えば、去年の富士通は、みんながやることを理解していたから、いい成績を残せたということですね。

それはありましたね。練習をやっていてみんなの気持ちと理解力が同じで、リーグ戦が始まる前から「これ、絶対にいける!」っていう感触がすごくありました。だから早く試合がやりたくてしょうがなかったです。で、勝っていくのも「あれだけ練習やったんだから勝たなきゃおかしいよね」って、納得できる感じでした。

——では、今年はチームが仕上がるのに時間がかかると思っていましたか?

思ってました。今年は大変だと。だけど去年、勝ち続けていたというのがあるから、今シーズン負け続けた時に「これじゃあマズイ」という気持ちがあるんですよ。メンバーが変わったからといって、負けていいとは思ってないです。それは救われているところかな。

——結果を残した矢先に、相澤選手の移籍やヘッドコーチが変わったことについては、自分の中ではどう消化してきましたか?

はい。それはもう、しょうがないことだと思ってましたね。それによって自分にかかる負担も大きくなることも理解してここに残ると決めたし。いろんな覚悟をして、自分はこのチームでやろうと決めたので。中川さん(ヘッドコーチ)は、最初は自分たちに遠慮しているところがあったんですけど、今は自分たちの意見を取り入れつつ、言わなきゃいけないことを言ってくれて、いい雰囲気の中でやっています。

——そんな中で目指しているバスケットはどんなスタイルですか?

そんなにみんな身長が大きくないので、走れる展開のバスケット。リバウンドからのブレイクで、インゴールされてもすぐブレイクで持っていって、アーリーオフェンスをやっていきたいです。最終的にはファイナル4を目指しています。

——富士通の中で自分の役割はどんなことだと思いますか?

今年はリズ(相澤選手)さんが抜けて1番(ポイントガード)をやっているので、チームが悪い流れにいかないように立て直すことだったり、悪くなった時に自分が率先していい方向に持っていくことが役割。プレイでは切り替えしの速さと、ブレイクで持っていった時のパスをしっかりと。今年は点数よりもアスシトが多くなってきています。

——ところで、船引選手は愛知学泉大でポイントガードにコンバートされ、飛躍的に伸びた選手ですね。

はい。もう学泉に行ったことが自分の転機だったんじゃないかと。学泉ではガードへのコンバートが難しかったというよりも、覚えることが多すぎて、学泉のバスケットを吸収することに夢中だったというか、いっぱい、いっぱいでした。高校まではフォワードで何でもやってる感じだったんですけど、そんな私を何で木村先生(現デンソーヘッドコーチ)はガードにしたんだろうと謎でしたね(笑)。学泉では「ガードって何だろう?」から始まり、私の場合はゲームをコントロールするのがガードという答えになりました。

富士通では、まゆみ(船引)、ラン(佐藤)、レイ(三谷)、ハル(今)、シャック(柳谷)と走れる子が多く、個々の能力を引き出してあげるのが面白いし、やりがいがありますね。

——最後に、船引選手にとってバスケットの最終目標、理想像とはどういうものですか?

まあ、もう年を取ってきたこともあるし、みんなの見本になる選手になりたいとは思っています。プレイもそうですし、試合や練習に向かう姿勢だったりとか、試合のためにいろいろ準備することだったりとか。そういうことで見本になれる選手になりたいですね。

質問コーナー(ホームページに寄せられた質問にお答えします!)

●姉妹で同じチームでバスケットをやっていて、いいこと、悪いことはありますか?

いいことは、お互いが何をやりたいかが、他の人より分かるっていうのがありますね。特に私はディフェンスでそのことを感じるんですけど。「ヤバイやられた!」という時に必ずまゆみがカバーに入ってくれたりとか。そのタイミングで入ってくれるのは、やっぱり妹しかいないっていうのがありますね。逆に、私もこの人はまゆみがつけないなと思った時にカバーしたり、この範囲だったらまゆみはつけるなと思ったらカバーにいかなかったり。妹とも「お互いそう思う」という話はしたことがあります。

妹とは同じチームでやりたいというのが常にありましたね。まゆみは私とタイプが全然違って、自分にないターンとかステップからのオフェンス力を持っていて、ガードとして、もっともっと引き出したいというのがありますね。悪い面は何もないですよ。

●マッチアップしていて楽しいライバルは誰ですか?

去年は2番としてポイントゲッターについてたんですが、その時に面白かったのは大山さん(妙子/JOMO/引退)ですね。あんなに隙のない人は初めてでした。大山さんだけはオフェンスやっていても隙がないし、ディフェンスをしていても「あっ、やられそう」って思うと案の定やられてしまう。対戦していてすごく勉強になったので、もう一度やりたかったというのがあります。ほんとに、大山さんはすごい!

●チームのホームページのプロフィールに、休日の過ごし方に「引きこもり」と書いてあるのですが、これはどういうことですか?

それはですね(笑)、休みの日は掃除とか洗濯をして、天気がいいと布団を干して、溜まっていたビデオを見て、家でやらなきゃいけないことを一気にやるというか。ハッキリいっちゃえば、疲れているから外に出る元気がないんです(笑)。休みの日の朝もパッチリ目が覚めちゃって。私、朝方人間なんですよ。練習が終わったら帰ってすぐ寝ちゃうという人なんで(笑)。何かやらなきゃいけない時は早目に起きて、たとえば洗濯とか掃除をするタイプなんですよね。

●後藤正規(アイシン)さんが目標の選手と聞きました。どんなところを目標にしているのですか?

後藤さんのバスケットに対する姿勢がすごいと、知り合いの人から聞いたことがありまして。プレイもすごいんですけど、バスケットに対する姿勢だったり、取り組み方だったり、周りへの気遣いだったり。話したことはちょっとだけあるんですけど、その時も初めての会話だったのに、いろいろと気を遣ってもらって、こっちは「すいません」みたいな(笑)

●名門・愛知学泉大で学んだことは何ですか?

これは、勝つこと、勝ち続けることの難しさが一番ですね。はい。自分が1年の時のインカレで負けて2位だったんですけど、先輩たちはみんな泣いてたんですよ。自分は1年生だから2位でもスゴイと思っていたので、なんで泣くのか分からなくて。「このチームは負けちゃいけないんだ。2位はビリも一緒なんだ」っていうのがそこでやっと分かって。これは負けず嫌いもプラスしてると思うんですけど、同じ人間で、同じ女性でしかも同じ日本人で、同じく毎日練習やっているのに、「負けてもしょうがない」とは思えないんです。勝つことの難しさを知っているから、もっと練習して、さらに上を目指していきたいと思いますね。

構成/小永吉陽子