- 2013年2月27日(水)特集
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“オリジナル”なSGスタイルを確立したトヨタの若きポイントゲッター
川原 麻耶選手(トヨタ自動車 アンテロープス)

今回のゲストはトヨタ自動車の川原麻耶選手です。今シーズンは得点ランキング5位(平均15.64点)、フリースロー確率2位(92.31%)と貢献し、2年連続Wリーグのベスト5を受賞。オールジャパンでは初優勝へ大きく貢献しました。クイックリリースから放たれる3ポイントシュートとアグレッシブな攻防を武器に、トヨタのポイントゲッターへと成長中です。川原選手が得意とする3ポイントシュートの極意、初優勝を遂げたオールジャパンの感想、プレーオフへの意気込みを聞きました。
——オールジャパンでは初優勝を遂げました。時間が経ち、改めて思うことは何ですか。
優勝したことは本当にうれしかったです。最初は実感が沸かなかったんですが、試合後にファンの方や会社の方からおめでとうと言ってもらえて、反響がたくさんあってビックリしました。これが優勝することなのかなーと感じました。でも、今は気持ちを切り替えて、チャレンジャーの気持ちでいます。
——優勝したことにより、「勝つためには、これをやればいいんだ」と手ごたえや実感をつかめたことはありますか。
ありますね。オフェンスにしても、ディフェンスにしても、チームがやるべきことの決まり事を徹底してやることが大切だと実感しました。うちは個人技で勝てるチームではないので、チームがひとつになったことで、結果が出たんだなと感じました。
あと、これまでのトヨタは、接戦になってくるとベテランの方に頼っていたのですが、逃げないでリングに向かう姿勢が大切だと思いました。これは、後藤さん(ヘッドコーチ)にずっと言われてきたことで、変わってきたところだと思います。今までは矢野(良子)さん、池田(麻美)さん、久手堅(笑美)さん頼みだった気がします。今シーズンは(森)ムチャや栗原(三佳)たち、私より下の選手も思い切ってやれていると思います。
——川原選手は高校(大阪薫英女学院高)、大学時代(大阪薫英女短大)はポイントガードをやっていましたが、見事にシューターに変身しました。ポジションを変更した理由は何ですか。
最初はポイントガードとして入ったのですが、トヨタのシステム的な動きが理解できなくて、チョンさん(チョン・ヘイル氏。前年度までトヨタ自動車のヘッドコーチ)に指摘されていました。たまたまフォワードの人数がいなかったときに、チョンさんにフォワードをやってみるかと勧められて、やってみたら「いいんじゃない」と言われて、そこから2番ポジションをやるようになりました。
——ポイントガードからシューターへプレイスタイルを変えるのは大変だったと思います。 縦横無尽に走る運動量の多さは2番になってからですか? それとも、もともと持っていたものですか?
いや、もともとではないです。チョンさんに言われたのは、私は2番の中では小さいほうなので、小さい選手が大きい選手に勝つにはスピードで対抗しないといけないと言われて、それから走ったり、スピードで振り切ったりする練習をするようになりました。最初は走るスピードは人並みだったんですけれど、チョンさんに走り方を教えてもらってから速くなったんです。2番だとシュートやドライブがこんなに面白いんだって発見があって、どんどん、やりがいが出てきました。
——もともとなかったスピードや運動量ある動きを身につけるのは、並大抵の練習ではできないこと。どのような練習をしたのでしょうか。
とにかく一番に心掛けたのは体力をつけることでした。普通は当たり負けすると体力で消耗するんですけれど、体力をつければ当たり負けしないし、他の選手が疲れてきでもスピードを出せるとチョンさんに言われて、私はそれを信じてひたすら走る練習をしました。ダッシュで走る練習では、チームでトップになることを意識しました。あとは、チョンさんが熱心に教えてくれたことに対して「変わりたい」と思ったのが一番です。とりあえず、スピードはチームで一番になるぞ、と思って走っています。
——今シーズンは久手堅選手がケガで不在の間にポイントガードをやっていましたが、そういう面では高校、大学時代の経験が生きたのではないですか。
はい。それもありますし、2番をやっていたら、ここでボールが欲しいという気持ちがわかるので、周りが見えるようになったと思います。
——トヨタはこれまで3年連続でファイナルに進出しましたが、昨シーズン、3年目のチャレンジではじめてJXに1勝しました。そこから自信を得たように感じます。勝てなかった時期は、どのような気持ちで臨んでいたのですか。
勝てない時期は、なんで勝てないのかわかりませんでした。JX対策もしっかりやっていたし、なんで? という思いがありました。でも、JXは私たちより大きいし、経験の差もあるし、私たちはファイナルという大舞台に緊張してしまって、納得いくプレイができなかったんです。たぶん、昨年のファイナルで1勝してから苦手意識がなくなったり、気持ちの面で変わったんだと思います。
——そしていよいよ、プレーオフ目前となりました。プレーオフへ向けて、個人の目標と意気込みを聞かせてください。
個人では、3ポイントの確率をあげることと、私がマッチアップする相手は身長が高いので、簡単にポストアップさせないこと。久手堅さんの変わりに出たときはしっかりつなぐことを心掛けたいです。プレーオフに向けては、富士通とのセミファイナルをしっかりと勝ち上がってファイナルに行くこと。そして、決勝でJXと対戦することになれば、向こうはオールジャパンで負けているので気合いを入れてくると思うし、間宮(佑圭)さんも戻ってきているので、その高さに飲まれないように、みんなで戦っていきたいです。どこと対戦しても私たちはチームプレイで対抗したいと思います。
質問コーナー(ホームページに寄せられた質問にお答えします!)
●Wリーグで仲がいい選手は誰ですか?
同期の藤原(有沙、デンソー)、藤吉(佐緒里、シャンソン)、吉田(亜沙美、JX)と仲がいいです。この3人は日本代表でも一緒だったので、いつもつるんでいました。藤原さんと藤吉さんは落ち着いていて、私と吉田さんはちょっと抜けていて、子供っぽいと言われます(笑)。みんなでいると、楽しくてずっと笑っていますね(笑)
●オフの日の出没スポットはどこですか? オフの日はインドア派ですか? アウトドア派ですか?
よく出没するのは名古屋の栄。買い物したり、健康ランドに行ったりしてブラブラと過ごしています。オフの日は、出掛けるときは出掛けるけれど、出掛けないときは家から一歩も出ないこともあります。休みが2日あったら出掛けるのですが、疲れている場合は次の日の練習のことを考えると…なかなか出られないですね(苦笑)
●川原選手がハマっていることは何ですか? 何をしている時間が好きですか?
ハマっているのはスタバ(スターバックスコーヒー)に行くこと。気がつくと、スタバでまったりしています(笑)。好きなのはネイルです。シーズン中はできないので、オフになると思う存分ネイルをしますね。足の爪はいつもネイルをしているので、休みの日はフットネイルをしている時間が好きです。
●ロングヘアーの川原選手。バスケをするにあたって、ロングヘアーで大変なことはありますか? お手入れ方法があったら教えてください。
髪をこんなに伸ばしたのははじめてです。Wリーグで一番長いんじゃないかなと思います。チームメイトには「傷んでいるから切りなよ」と言われるのですが、いっそのこと、どこまで伸ばせるか、今シーズンは切らずにいようと思っています(笑)。バスケをするうえでは中途半端に長いよりは、長いほうがまとめやすいんですよ。イオンが出るドライヤーを使って、トリートメントをしっかりして、お手入れしています。
●思い切りのいい3ポイントシュートを決める川原選手。3ポイントシュートのコツを伝授してください。
私は両手の人差し指と中指の爪を少し伸ばしているんですが、ボールが爪に引っかかる感じでシュートをすると入ります。爪を伸ばすと危ないので、爪にテーピングをして、爪の先の部分だけ少し出しています。爪がちょっとでも割れると回転が変わってしまうので、爪の手入れにはこだわってるんですよ。あとは、まっすぐジャンプして打って、まっすぐに着地すること。体がブレるとシュートが入らなくなりますね。
シュートタッチや感覚は人それぞれですが、調子が悪い時は打ち続けることが大切だと思います。シュートが入らない日は「今日はごめんなさい!」と心の中で謝りながら打っています(笑)。打ち続けていると感覚が戻ってくるし、シューターは打ち続けることが大事だと思います。
インタビュー&構成/小永吉陽子