NEWSニュース

2011年5月9日(月)特集

“史上初”新人王 & MVP!「今に満足しないで向上したい」

渡嘉敷 来夢選手(JXサンフラワーズ)

渡嘉敷 来夢

今回のゲストはJXの渡嘉敷来夢選手です。ルーキーシーズンに新人王とMVP同時受賞は史上初の快挙。191㎝の長身でリバウンドやブロックショットはもちろんのこと、速攻に走れる運動能力の高さは、まさに新世代に現れたエース。JXのみならず、将来の日本を背負って立つ逸材だ。そんな渡嘉敷選手にルーキーシーズンを振り返ってもらい、これからの課題を聞いた。多くの経験を積んだ1年目に得たものは、今後のバスケット人生に生かされていくことだろう。

——ファイナル第1戦では渡嘉敷選手の活躍が光りました(26得点、12リバウンド)。レギュラーシーズンとファイナルでは戦い方が違いましたか?

ファイナルに対する気持ちはレギュラーシーズンとは全然違いましたね。ファイナル1戦目の出来は、自分のやるべきことはある程度できたかなと思います。レギュラーシーズンは戦う相手も試合数も決まっているけど、プレイオフは負けたら終わりだし、シーズンが終わるという気持ちもあり、最後に自分のやるべきことをやるという気持ちでした。それはできたと思います。

——ファイナルは第1戦を戦って中止になってしまいました。シーズンが途中で終わってしまった今の心境を聞かせてください。

一戦で終わったのは心残りがあるかと聞かれたら、もう少しやりたかったという思いはあります。でも、自分も福島(ファイナル第2戦の開催地・郡山にて、前日の練習中に地震が起きた)で強い地震を体験しているので、あの地震を経験していたら、被災地のことや、地震から日数が経っていないことを考えると、試合どころじゃなくて、他にやらなくてはいけないことがあるという気持ちはありました。福島で経験した地震は本当に怖かったです。

——レギュラーシーズンの出来を振り返って、自分の出来はどうでしたか?

前半戦は足の調子もあまりよくなくて、調整しながらやっていました。トヨタ戦(12月4日)からスタートで出させてもらって、スタートとしてはいいんじゃないかと思ったんですが(23分出場、11得点)、翌日のトヨタ戦は再延長になり、46分出た時はめっちゃキツかったです(17得点)。それまでは試合に出ても20分ちょっとだったので、ついていくのがやっとでした。そのキツさを経験しているので、トヨタとの再延長に比べたら他の試合はキツく感じませんでした。試合に出ているときは、やっぱり「やらなくっちゃ!」という責任感はありました。でも、試合を重ねていくごとに波がすごく激しくなってきて、その波をどれだけ少なくできるかを課題にあげていたんですが、まだまだでした。

——高校時代は5番(センター)でしたが、JXではポジションが4番(パワーフォワード)になりました。ポジションは自分のモノにできましたか?

最初は自分に何を求められているのか理解出来ていなかった部分もありました。自分がスタートになる前あたりから、「4番ポジションはもっと積極的に点を取りにいけ」と内海さん(ヘッドコーチ)から言われて、点を取ることを心がけるようになりました。でも、スタートになった前半戦はあまりインサイドでは得点を取りに行ってなかったです。自分の身長だったらミスマッチになるので、4番だからと外、外に出てしまうのではなく、積極的に中にシールをしにいこうとか、外でボールをもらったらドライブにいくのが自分の役割なんだとわかってからは、(4番ポジションが)しっくりくるようになったと思います。

——新人王を受賞しました。これは狙っていましたか?

はい(笑)。新人王は誰にも絶対に譲らないっていう気持ちはありました。チームに入った頃から「絶対に自分が獲るんだ」と思ってました。メディアの前では言っていなかったけれど、親とかには「自分が絶対に取るから、メグ(篠原恵、富士通)には負けないから」と言っていました。新人王が獲れたことは素直にうれしかったですね。

——では、MVPを獲れると思っていましたか? 実際に受賞した感想は?

自分もちょっと信じられなくて、すごくビックリですね。やっぱり、自分からしたら、シン(大神雄子)さんがMVPですね。シンさんは試合中に自分のことやみんなを引っ張ってくれるんです。自分の調子が落ちている時も、「大丈夫だよ、もっとこうすればいいんだから」とか励ましてくれたり、アドバイスをくれたので、なんで自分なんだろうと思いました。自分が賞を獲れたのは、自分一人の力ではないとよくわかりました。

——ルーキーでスタメンになり、オールジャパン優勝やリーグ1位、新人王にMVP獲得と、いろんなことを経験した1年でした。その中で良かった点と反省点は。

1年目から結構いろんな経験ができたので、これをどう活かしていけるかで、もっと伸びていけると自分では思っています。良かったのはそういう色々な経験ができたことですね。反省は、もっとこうやりたいとか、もっとできるんじゃないかと、試合を振り返って思う時があるんですよ。ここでボールをもらったら外へパスを振るだけではなく、ここで1対1に行けてたんじゃないかなと思ったり。試合が終わってDVDを見て、そう思えることがすごく腹立たしいんですよ。なので、こんなんで満足していられないな、と。

——自分の出来に満足できない思いは結構あったのですか?

周りは「新人なんだから、思い切りやればいいんだよ」とか「それだけできれば十分だよ」と言ってくれましたが、自分では歯がゆかったんです。自分ではもっともっと出来ると思うので、落ち込んでしまうこともありました。

——振り返ってみると、どんなことが学べて、今後の課題はどんなことでしょうか?

1年目は結構、身体の強さに苦戦したというか、悩みました。高さはそんなに困らなかったけれど、高校までは身体の当たりはそんなに強くなかったので、そこは結構味わいましたね。なので、2年目はそれに負けないで自分も当たりを強くしたいと思っています。それからMVPを獲ったことで、「あいつが?」とか見られないように、賞を獲ったからにはプライドも自分なりにあるので、今シーズン以上にやらないといけないと思っています。

質問コーナー(ホームページに寄せられた質問にお答えします!)

●休みの日は何をしていますか?

基本、外に出るタイプではないですね。休みの日は休んでいたいっていうタイプ。買い物をするときは都内や柏に出ることが多いけれど、次の日の練習を思えば疲れたくないので、部屋でゆっくりしたり、音楽を聴いていたりするほうです。でもオフは別で、このオフは毎日のように遊んでいますね(笑)。高校(桜花学園)の友達で関東に出てきている人がいるから、都内で集まったし、地元(埼玉)の友達とご飯食べたりして遊んでいます。

●渡嘉敷選手から見たJXとはどんなチームですか?

強豪チームなので、入る前はピリピリした空気があって、すごく怖いんじゃないかと思ってました。「おまえちゃんとやれよ」とか言われたり、すごく厳しいイメージがありました。でも実際は、練習でのメリハリはありますが、めっちゃピリピリした雰囲気があるわけじゃないし、「もっと楽しんでやらなくちゃ」みたいなムードがあります。特にレンさん(田中利佳)とかは試合前に「緊張してんなよ」と、よく声をかけてくれるので心強いです。みんな楽しいし、ワイワイしているというイメージ。

●ニックネームの「タク」はどういう意味ですか? 気に入っていますか?

「たくましいプレイヤーになるように」という意味で、JXの先輩がつけてくれました。候補が何個かあるんですよ。その中から「タク」が自分で一番しっくりくるなあと思って選んだので、今は気に入ってます。他にもいろいろありましたよ。光り輝く、脚光という意味で「ライト」とか。毎年、出てくるコートネームがあるそうで、「ルイ」「ジョン」なんかも候補に挙がりました(笑)。先輩には「由来は変えられるんだよ」と言われましたけど(笑)。地元の友達や高校の友達は「ラム」と呼んでくれるので「ラム」でも反応できます。

●自分の性格を分析すると?

絶対に負けず嫌いですね。それで、意外と綺麗好き。意外と恥ずかしがり屋。意外と人見知りなところもあります(笑)。それから、物事を言ってからやるんじゃなく、やってから言う派です。内に秘めている決意みたいなものはあります。昔からそうですね。

●身長が高くて得したこと、良かったことは?

えーっ、特にないんですよね。洋服も結構困るし、電車とかで頭ぶつけるし、家でも朝起きてすぐに鴨居に頭をバンッてぶつけたり(笑)。いいことは「あそこの高い所の物、取って」と言われて「いいよ」って取れること(笑)。普通の女の子は背が高いと嫌がるかもしれないけど、自分はそういうの全然ないです。小学校のときは身長が同じぐらいの男子から「俺、渡嘉敷を抜かしてやるから」と言われ「いや、絶対に負けないから」とか、「お前デカイんだよ」と言われたら「お前が小さいんだよ」と言い返していたくらいです(笑)

インタビュー&構成/小永吉陽子