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2009年5月19日(火)特集

飛躍の時を迎えたトヨタの若きエース

櫻田 佳恵選手(トヨタ自動車 アンテロープス)

櫻田 佳恵

今回のゲストはトヨタ自動車の得点源、櫻田佳恵選手です。今シーズン、Wリーグ3年目。ルーキー時代からスタメンとして活躍し、文句なしの新人王を受賞。常葉学園高3年時には、インターハイ、国体、ウインターカップで優勝し、3冠の偉業を達成。その高い得点力でU-18代表、ユニバーシアード代表としても活躍しました。今年度は初の日本代表候補にも選出され、意欲的に挑戦しています。これからのトヨタ自動車を背負って立つ“若きエース”櫻田選手の素顔に迫ります。

——ルーキー時代からスタメンを獲得し、新人王を受賞。振り返ってみると、どんなルーキーシーズンでしたか?

新人王はちょっと自信になりましたね。受賞した時は、Wリーグに入って1年間頑張って良かったと思ったのと、周りに応援してくれている人がいるから頑張らなきゃ、とさらに思いました。

——1年目はどこが通用して、どこが通用しなかったですか?

シーズンの最初のほうは緊張していましたね。今でもビデオ見ても「こんなプレイしていたの!?」と思います(苦笑)。だんだんと慣れてきてからは、自分にできることとできないことがわかってきて、終わってみれば充実した1年でした。ダメだなと思ったのはディフェンスと、1対1でいけるのに最後のツメが甘かったこと。自分より大きい人に守られたときはシュートのバリエーションが少なくて、そこが甘かったですね。

——2年目の昨シーズンは、自身の出来はどうでしたか?

昨シーズンは……1年目のほうが自分らしいプレイが出ていたと思うし、2年目は自分が納得するプレイがあんまり出せていなくて、練習中でも試合中でも、チョンさん(丁ヘッドコーチ)に怒られることも多かったです。自分の中でここを乗り越えなきゃいけないと思っているけど、なかなか乗り越えられないという感じで…。

——それは、2年目になってマークが厳しくなったことが原因ですか?

マークが厳しくなったからといって、得点が取れなかったらフォワードじゃないので、自分自身の問題ですね。相手がどんなことをしてきても得点が取れるようになりたいです。今日はシュートの調子が悪いからダメだではなく、シュートが入らない時は他のことで頑張れるようにならなきゃダメだと思います。チョンさんからは「フォワードは点を取らなきゃいけない。最低でも15点は取れ」と言われています。自分も得点を取って調子を上げていくタイプなんですが、いい時はいいけど、悪い時は悪くて、波があるのが課題です。

——昨シーズンは多くの接戦を制して、レギュラーシーズン1位になりました。その要因は何だと思いますか?

シーズン始まる前からチョンさんに「今シーズンは楽に勝てる試合はない」と言われたので、覚悟で臨みました。競って勝つことを繰り返しているうちに、勝つことが自分たちでも自信になってきたような気がします。それまで、いいところまでいっても負けていたので、悔しさを次に生かそうと思ったことが出てきたのだと思います。

——昨シーズン、これまでと大きく変わったところはどこだと思いますか?

個人個人の意識…ですかね。昨シーズンは競っていたり、リードされても焦ることがなかったです。私が1年目のシーズンは競ったら慌てることが多くて…。でも昨シーズンは試合をしていても「大丈夫、大丈夫」と思うことが多かったです。何が変わったのかな…と思うと意識かな? 欲かな? チョンさんの勝ちたいという気持ちが、選手たちにすごく伝わってきたんですよね。それも大きいと思います。

——セミファイナルではシャンソンに敗れてしまいました。どんな反省、課題が残っていますか?

個人的には自分の持ち味が出せなくて、まだまだだと思いました。1戦目は…あれは負ける試合ではなかったと思うんです。でも1戦目に負けてしまって、それが痛かったです。その次の試合に勝ったことがこれまでのトヨタと比べたら大きいと思うのですが、そこからのあと一歩がなかったです。

——あと一歩の壁を破るには何が必要だと思いますか?

周りからは「経験が足りない」と言われるんですけど、やっぱり経験なんでしょうか。でも、自分たちが今までやってきたことを自信にしていけば、トヨタらしいバスケットができると感じるし、リーグ戦のような戦いがプレイオフでもできれば、セミファイナルの壁は乗り越えられると思います。

自分自身の課題としては、今は味方の人にシュートチャンスを作ってもらっているので、チームの動きの中で自分が生きるプレイや、味方が生きるプレイを自分から作っていかなければと思っています。本当に思いましたね。もっと自分から動いていかないと……。


——今年は初の日本代表候補に選ばれました。意気込みを聞かせてください。

最初に聞いた時はうれしかったというより、ビックリしました。「自分でいいの?」って。でも、選ばれたからには、自分にできることを見つけたいです。中川さん(ヘッドコーチ)から求められているのは、積極性と外からの得点力です。日本代表はすごい選手の集まりで今は学ぶことばかりですが、新しいことを吸収して必ず自分のチームに持ち帰ります。自分にもチームにも、プラスになるように頑張りたいです。


質問コーナー(ホームページに寄せられた質問にお答えします!)

●練習が休みの日はどんなことをして過ごしていますか?

部屋に引きこもっています(笑)。うちのチームは休みになると結構みんな外に出るんですが、私は前から予定を立てておかないと行動ができない人なので、部屋にいることが多いですね。寮の自分の部屋に小さいですがベランダがあって、そこにリクライニングソファを出して、音楽をかけて、お茶を用意して読書をするのが楽しいですね。お風呂で本を読むのも好きだし、一人でフラフラと街に出掛けることも好きですね。

●櫻田選手から見たトヨタのチームとは?

大学の時に合宿に来た時は「怖い」イメージがあったんですよ。選手の人とあまりしゃべる機会がなかったので。それが実際に入ってみたら、全然そんなことはなかったです(笑)。みんな楽しい人たちばかりで、仲がいいですよ。普段は色々な話が飛び交っていますね。

●大好物は何ですか?

甘いものが大好きです。「ご飯は甘いものでいい!」みたいな感じです(笑)。寮でケーキを食べる時、食べきれない人はみんな私にくれます(笑)。一人でファミレスは入れませんが、一人でおいしいケーキ屋に入って、カップルの横でケーキ食べられますよ(笑)

●コートネーム「サラ」の由来は?

トヨタに入った時、コートネームを決める会議みたいのがあったんです。候補が3つあって、櫻田から2文字とって「サラ」。名字と名前の最初をとって「サヨ」。もうひとつは「メイ」。なんでメイだったかは忘れましたけど(笑)。候補の中から次の日までに決めなきゃいけなかったので、大学時代の友達に相談したんですよ。大学には「メイ」という子がいたので、「サラとサヨのどっちかといったらサラだねえ」となって、サラに決めました。本当は大学時代に呼ばれていた「ユキ」が良かったんですけど、キコ(榊原紀子)さんだと思うんですけど「ユキっぽくないよ」と言われまして、イヤとは言えなかったんですよ。「あ、私、ユキじゃなくなるんだ」とその時に思いましたね(苦笑)。今はだいぶ慣れましたが、1年目の時は「サラ」と呼ばれても自分のことだとピンと来なかったです。

●3冠を達成した常葉学園高時代のエピソードを聞かせてください。

やっていて本当に楽しかったです。常葉は走る練習と反復練習が多くて練習は本当にきつかったけど、中学時代から6年間一緒にやっていたので、みんなのことを信頼していました。休みの日はいつも三浦(歩惟=トヨタ自動車)と山田(未来=日本航空)の3人で遊んでいましたね。以前、3人で会った時に「いつかまた3人で一緒にバスケやりたいね」という話をしたことがあります。JAL戦だと3人でコートに立つことができたので、うれしい思いはありました。引退したあとでいいので、いつかまた同じチームでやりたいですね。

インタビュー&構成/小永吉陽子