- 2007年1月10日(水)特集
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優しく頼れる甲府の大黒柱“トヨ”!
松木 豊子選手(甲府クィーンビーズ)

今回のゲストは甲府のキャプテン、松木豊子選手です。昨シーズンは左膝の靭帯を切断してリハビリの1年でしたが、今シーズンはキャプテンとなって復活! 甲府の欠かせないゴール下の守護神として君臨しています。中国から来日して11年目、甲府に入社して8年目。日本の生活にもすっかり慣れ、几帳面な一面をのぞかせるチームの優しいお姉さん。昨年、晴れて日本国籍を取得し、真の「松木豊子」となった“トヨ”に、Wリーグのこと、日本と中国のバスケットボール事情など聞いてみました。
——基本的なことから聞きたいのですが、バスケットを始めた時期ときっかけは何ですか?
父がバスケットボールをやっていたので、その影響で小6の時に始めました。その後、体育中学に進んでバスケを続けました。中国には日本のような「スポーツ少年団」とか「部活動」はないんですよ。中学でバスケットボールをやる人というのは、体育中学に入学して、バスケットボールと勉強をすることになります。体育中学にはその競技の優れた人が集まります。私は攀枝花(ファンチューファ)市の体育中学に入学して、1年後に四川省の選抜に選ばれました。
——そんな優秀な学校でバスケットボールをやっていたのに、日本に来ようと思った理由は何ですか?
中国の体育学校の監督さんを通して、日本のバスケット関係者の方に声をかけてもらいました。環境を変えて自分を鍛えようと思いました。バスケだけじゃなく、違う国の言葉とか文化も覚えられると思って決めました。
——高校1年生の後半に龍谷富山高に入学しましたが、生活面はすぐに慣れましたか?
来日した時は3年生に私と同じく中国から来た先輩がいましたが、ほんの数ヶ月だけしか一緒になれなくて、先輩が卒業してからは一人暮らしでした。3年生になった時にはもう一人中国から後輩が来て、2人で一緒に生活していました。最初は勉強も練習も慣れなくて大変でしたね。来日して最初の2ヶ月かは日本語の先生に習い、そのあとは仲間と交流することで日本語を覚えました。
——今はもう日本語は完璧ですね。
いえいえ、完璧じゃないです(笑)。日本語は難しいです。発音は中国語のほうが難しいですが、文法は日本語のほうが難しいです。今でもたまに変な言葉を言うみたいで、チームメイトから突っ込まれます。月刊バスケットボールに「チームの話題」というコーナーがありますよね。そこにしょっちゅう出ています(笑)。でも不思議なことに、日本語をしゃべって生活していると、時々、中国語が出てこない時があるんですよ(笑)
——ところで、Wリーグでは島立部長がつけてくれた「松木豊子」という名前でプレイしています。この名前の由来は何ですか?
高校までは本名の梁艶(リャン・イェン)でした。甲府に入って名前を変えました。梁から木の部分を取って「松木」、艶から豊の部分を取って「豊子」です。自分の名前が生かされているし、綺麗な名前でとても気に入ってます。昨年2月に帰化申請が降りて、今は日本人となりました。
——日本人に帰化することを決意した理由は何ですか?
やっぱり最初は自分は中国人であることにこだわっていたんですが、日本に来てから日本人の心の温かさがわかって「日本人になりたいな」と思うようになりました。それでいろいろ考えた末に日本でバスケを続けたいし、「帰化できるんだったら帰化しましょう」という話になりました。両親も自分のことだから自分で決めなさいと言ってくれました。今ではすっかり「松木豊子」です。
——甲府では今年はキャプテンですが、自分の役割をどうとらえていますか?
みんな自覚もってやってくれているので、キャプテンはそんなに大変ではないです。私はセンターなので、ゴール下でのリバウンドと得点ですね。ゴール下を支配することが私の仕事です。
——今シーズンはすでに三菱電機がWIで優勝を決めています。そんな中で残りの試合はどんな目標を持って臨みますか?
今シーズンは粘ることが足りなくて、途中で失速してしまいました。でも、まだあと4試合あります。チームは今シーズンで終わるわけではないので、だめだったところを反省して、粘る甲府のバスケットを展開して、来シーズンにつなげたいです。
——最後に、松木選手はどんなプレイヤーを目指していますか?
誰からも頼られる選手になることです。今はディフェンスに問題があるので、ディフェンスがきちんとできるプレイヤーになりたい。また、チームを1部(Wリーグ)に昇格させること。私は1部の経験はないんですけれど、先輩から1部時代の話を聞いているので、復帰しなければいけないと思います。
質問コーナー(ホームページに寄せられた質問にお答えします!)
●松木選手から見て甲府はどんなチームですか?
うちのチームはA型とB型に分かれてるんですよ(笑)。A型は松角さん、柘植さん、佐藤望さん、小沼さん。B型は下島さん、山田さん、浅石さん、岡田さん。マジメな人も多いけれど、マイペースというか、下級生はドジな人が多くて、練習か終わると活気があります。自分はA型です。根はマジメで性格は細かいですね。部屋を散らかしたくないので掃除が好きです。
●ヘアスタイルはずっと短いようですが、短いのが好きなのですか?
はい。短いのは昔からです。髪を伸ばそうと思って何度も伸ばしたのですが、途中でイヤになってしまって切ってしまうんです。長くなると面倒くさいじゃないですか。みんなからも「短いほうがいいよ」と言われるので。だから、ずっと短いです。
●趣味は何ですか?
音楽を聴いたり、本を読んだりするのが好きです。中国のアーティストのCDも聴きます。あまり流行を追うタイプではないです。日本のアーティストで好きなのはサザンオールスターズと福山雅治。最近は倖田來未もよく聴きます。
●日本の文化で好きなところは何ですか?
挨拶をすることです。日本では朝、昼、晩と挨拶の文化があることに感心しました。たとえば、会社の中では知らない人に会っても「おはようございます」と挨拶しますよね。中国では自分と関係ない人には挨拶はしないのです。街が綺麗で過ごしやすいのも好きです。日本のきちんとしたところはいい文化ですね。
面白いのは漢字です。日本と中国の漢字はこんなに違うんだって思うことがあります。「手紙」ってありますよね。中国で手紙は「手を拭く紙」のことなんです(笑)。中国で手紙は「信」と書きます。日本で手紙の意味を知った時は「あれ〜?」って(笑)。あと「汽車」や「電車」のことを、中国では「火車」と書きます。エネルギーで動く車だからです。日本の文化を覚えるのが面白くて、今は帰省も2年に1度くらいしかしません。オフは甲府で過ごすのが好きなんです。
●日本で食べる中華料理はおいしいですか? よく、「日本で食べる中華料理は日本人用の味付け」だと聞きますが。
私は四川省の出身なので、日本で食べる中華の味はちょっと辛さが足りないです。甘い感じがするので、いつも自分で唐辛子を足して食べています(笑)。でも日本のワサビは四川料理とは違った辛さがありますね(笑)。逆に、日本の味に慣れてしまって、今は中国に帰った時に四川料理が辛すぎるんです(笑)
構成/小永吉陽子