- 2006年2月20日(月)特集
-
冷静さと力強さを備えたセンターになることが課題
高木 美恵選手(荏原 エバラヴィッキーズ)

今回のゲストは荏原のセンター高木美恵選手。名門・東亜学園高出身、185㎝の高さと幅を生かしたセンタープレイで荏原の守護神となっています。高校卒業後はジャハンエナジーに入社し、1年目のシーズンに地元・日本(徳島)で開催されたアジアジュニア選手権に出場したほどの逸材。しかし、ジャパンエナジーを2年で退部。一時はあきらめてしまったバスケットボールの道を、心機一転、荏原に移籍して選手として花を咲かせました。粘り強いチームカラーが出てきた今シーズン。荏原のエースとして今後も期待される高木選手の素顔に迫りました。
——リーグ戦が2月19日で終了しました。今シーズンから桑田ヘッドコーチが采配をふるうようになり、戦い方も変わって粘りが出てくるようになったと思います。高木選手はどんな手応えを感じたシーズンでしたか?
桑田ヘッドコーチには昨シーズンから練習を何度か見ていただいたので、指導にはすんなり入っていけて戸惑いはなかったです。昨シーズンまでは私とガードの小関(真美)さんを中心に、それぞれの役割が明確にあったのですが、今年は新人が5人入って選手の入れ替わりが多かったので、チームの雰囲気が随分と変わりました。ガードやフォワードの選手が多くなり、そんな中で自分はどれだけスピードについていけるか、また、冷静にやれるかということを意識してきました。チームとしての得点面では外角シュート率が上がったのでだいぶ楽になったと思います。自分では時々、調子が落ちてしまうこともあったのですが、集中するところは意識できました。
——チームとしての粘りは出てきましたが、あと一歩で勝てそうなゲームを落としている面も気になりました。
そうなんです…。そういう僅差の試合を勝っていれば、もっと上位に行けたと思うのですが…。
——今シーズンはアイシンAWの浜口選手とマッチアップすることで、センターとして感じたこともあるかと思うのですが。
アイシンAWには勝てなかったけれど、思い切りぶつかることができた相手でした。浜口さんは以前同じチームでプレイしていたので、対戦するのをすごい楽しみにしていたんです。アイシンAWとの試合はチーム一丸となって戦えましたし、自分自身も楽しかった。その中でも浜口選手のうまさを目の当たりにして勉強になった部分がありますね。浜口さんのプレイは今までの2部(WI)にはなかった強さだし、自分が目標としている落ち着いたプレイを持っているし、浜口さんにつられて周りも機能していたので、自分もこういう選手になりたいなあと思いました。そのことは同じチーム(ジャパンエナジー)にいた時より感じました。ジャパンエナジーにいた頃は自分は何をやっているのか分からなかったから…。対戦してみるとすごい存在感を感じました。
——ジャパンエナジー当時の話が出たのですが、高木選手にとってはジャパンエナジーから荏原に移籍したことが選手としての転機だったと思うのですが、移籍した理由を聞かせてもらえますか。
ジャパンエナジーには2年いたのですが、気持ちがついていかなくて辞めてしまいました……。自分自身に目標がなくて、気持ちが弱かったんだと思います…。ジャパンエナジーはトップを目指すチームなのに、自分一人だけ目標がなくて「私は何でここでやってるんだろう」と悩みました。気持ちの面でついていけずに、それでバスケに対する思いもなくなって辞めてしまったんです。その後、高校の時の恩師から練習を見に来てくれないかと誘われて練習を見に行きました。そこで「やっぱりバスケがしたい!」という気持ちになったんです。そんな時に荏原の坂根監督に声をかけていただきました。
——すぐに入部を決めたのですか。
いえ、最初は考えました。誘われた時はジャパンエナジーを離れて後悔した気持ちがだんだんと出てきていた時だったのでバスケをやりたい気持ちはあったのですが、新しいチームで始める勇気がなかったです。そうしたら坂根監督が「話を聞くだけでも」と言ってくれて、いろいろ話を聞いているうちに入部を決意しました。本当に運がいいというか、嬉しいことでしたね。
——高木選手が入部当時の荏原は関東実業団に所属していました(2001年にWI昇格)。自分の中ではいつ頃から「荏原のエース」としての自覚が芽生えてきたのですか?
正直、入った時は関東実業団だったので、「ここなら楽しくできる」という気持ちがあったんです。入社して1年でWIリーグに昇格した時に「このままじゃ勝てない!」とチーム全体の気持ちが変わりました。実際、WIでも最初の1、2年は勝てなかった。そこから徐々に「自分がやらなきゃいけないな」という気持ちになってきました。まだまだだと思うのですが、でもまずは「バスケが楽しい」と思える機会を与えてくれた荏原に感謝ですね。
——今シーズンの順位は昨シーズンと同じ3位ですが、粘りが出てきた分、チームとして成長ました。今後の課題は何でしょうか。
チームの雰囲気や試合の入り方に課題があります。やっぱり勝てない時は試合の間の一週間の練習がどこか集中してなかったりします。そういう場面は選手の中でも感じているところなので、気持ちを切り替えることができればと思います。練習から盛り上げていくことは試合をする以前の問題なのですが、コミュニケーションからしっかりしていけば、競った試合をモノにできるチームになると思います。自分のプレイはゴールから離れてしまうプレイは得意じゃないので課題はいっぱいなのですが、ゴール下のプレイやステップシュートを見てください。
質問コーナー(ホームページに寄せられた質問にお答えします!)
●私はゴール下の接触が苦手です。高木選手はどんな気持ちでゴール下で戦いますか?
やっぱり、リングに向かっていく気持ちが大切だと思います。「絶対勝ちたい」という気持ちが出てくると、自然に体がリングに向かっているけれど、気持ちが弱いとどうしても逃げたシュートになってしまいます。あとは冷静になることです。ノーマークになると焦ってしまうのはどこのポジションの人もあることだと思いますが、冷静にディフェンスを見ることができれば自然にいいシュートができると思います。今、言ったことは私の課題でもあるのですが…。
●荏原は仕事との両立が大変だと聞きました。どんな生活を送っているのですか?
平日は朝の8時から4時半まで仕事をしています。それから5時半から3時間くらい練習なのですが、今は会社の体育館が工事中で使えない状況なので、仕事が終わったらすぐに借りている体育館に移動します。大森スポーツセンターとか、近隣の学校の体育館で練習していて、自転車で移動しています。借りている体育館だとあまり長くいられないので、練習の準備の時などにコミュニケーションを図る時間が少ないことが課題でした。だから早く体育館ができることが今の楽しみです。それから会社の業務の中で社会貢献の一環として、地域の小中学生にクリニック(体育の授業や部活のクリニック等)をしているのですが、給食を食べたりできてこれが楽しいんですよ。練習が終わると、疲れているので何もする気力がなくてあとは寝るだけです(笑)
●寮生活は楽しいですか?
楽しいです。会社の近くにあって自転車で通勤しています。寮はひとつのマンションを借り上げていて、ワンルームに住んでいる選手もいれば、2DKのところに2人で住んでいる選手もいます。私は2DKに住んでいます。マンション内で選手の部屋に行き来できるのは楽しいし、何かあった時には近くに住んでいるのは心強いです。休日は部屋でゆっくりとDVDを見ていることが多いですね。
●プログラムに「海外TVドラマが好き」と書いてあります。どんなドラマが好きですか?
キャプテンの寺田さんの影響でアメリカのドラマを見るようになりました。「フレンズ」や「アリーマイラブ」とか。アメリカのものが好きで、見ていると止まらないんですよ。
●シーズンが終わって、今一番したいことは何ですか?
今、一番興味があるのは海外旅行。年に一度、シーズンオフに海外旅行をしています。英語圏の文化に興味があって、実はあまり上達してないのですが、練習が休みの週に一度、英会話学校に通ってるんです。アメリカのTVドラマも英語文化に触れることに役立てています。これが、今一番興味があることですね。今年のオフはオーストラリアに一週間ホームステイしたいと計画しています。坂根監督、行ってもいいでしょうか?(笑)
構成/小永吉陽子