- 2005年12月1日(木)特集
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「がむしゃら」から「周りを生かす」バスケへ今この時が頑張りどき!
大神 雄子選手(JOMO サンフラワーズ)

今月のゲストはJOMOの司令塔であり、日本代表の司令塔としても成長著しい大神雄子選手。山形一中、桜花学園高時代から、常にバスケット界の第一線を走ってきた選手です。いつもファンの前では元気で明るい大神選手ですが、今シーズンは思うような結果が出せず苦難のシーズンを送っています。プレイスタイルでもこれまでの得点力を生かしたスタイルから、周りを生かすタイプの司令塔へと変貌を遂げるべく試行錯誤中。そんな進化を続けるために、歯を食いしばっている最中の大神選手の声を聞きました。
——12月1日現在8勝8敗。2巡目が終わって、自分とチームの調子はどうですか。
今うちは5番手なんですけど、負けが込んだ時の修正が正直できてないですね。負けたあとに雰囲気いいチームなんてないと思うけど、(上昇する)きっかけがない分、チームの雰囲気も落ちているかな…。特に三菱に負けちゃって2巡目が終わったからなおさらです。
——負けが込んでいる原因は何でしょうか?
負けたゲームというのは自分に余裕がなくて、コントロールできなくて負けている時なんですよ。点数を取りにいくところ、パスするところが見極められていない。自分に余裕がある時はけっこういい展開ができているんですけどね。
去年はサン(楠田香穂里)さんが抜けたこともあって「ディフェンスからブレイクに持っていこう!」みたいに勢いでやってたんですけど、今年は競った時の自分の弱さをひしひしと感じているんですよ。逆に言うと、去年は勢いと必死さだけだったけど、今年は周りのことを考えているのかもしれない。あ、そうなのかもしれない! 特に去年はリョウ(矢野良子)さんという大黒柱もいたから人任せにもできたけど、今年はそれじゃダメなんだと。もっと大人になって勉強して、フロアリーダーとして責任ある仕事をすることが必要ですね。
——大神選手が考える「フロアリーダーとして責任のある仕事」とは何ですか?
“きっかけ作り”だと思うんですよ。チームがいい雰囲気でてきるような。それがやれたらいいなと思うんですけどね。きっかけ作りってプレイだけじゃないと思うし。こういう若いチームだと勢いをつけるために練習を一生懸命にやったり、バカみたく声を張り上げたり、練習が終わった時にさりげなく「また明日頑張ろう」と一声かけたりしてコミュニケーションをとるだけでも違うと思うし。そういう周囲に対しての気の遣い方がまだできない。自分がいっぱいいっぱいになっている時は周りに気を遣えないから、今はネガティブになっているかもしれない。
——そこまで自分を見つめられているだけでも、今振り返ってもらった意味がありますね。
そうですよね。そう。そうだと思います。去年なんて「結果でOK!」みたいだったから(笑)。結果がいい時と悪い時の自分の分析なんて考えもしなかったし、今年は少し考えているのかな。こうやって言葉にすると分かりますよね。「お前、悩んでるじゃん」って(笑)。今言ったことをあとで振り返って、ここ直せた、まだ直せていないって分かりますからね。今言ったことを克服できたと思えるよう頑張りたい。
——後半戦はチームをどう立て直していきますか?
3巡目、4巡目はめっちゃくちゃ大事! 自分らは追い上げる立場だから絶対落とせないゲームになってくるし。やっぱり練習でやったことしか試合に出ないと思うので、練習からピリピリじゃないけど、このタレ目をキリ目にして、キリキリって感じでつり目になるくらいに自分自身を追い込んで、周りに伝えていきたい。そうやって練習からやっていけば、何かきっかけで変わると思うんですよ。確かに三菱に負けたゲームのあとも普通の練習だったから、そのあとのシャンソン戦もトヨタ戦も良くなかった。三菱にディフェンスでやられたのに、負けたそのあとの練習が変わってないじゃん!って大反省ですね。
今思うんですけど、エース(大山妙子)さんとかって、普段の練習もそうだけど大事な試合の前は特に練習中からすっごい緊張感があったんですよ。先輩たちがそんな感じだったから自分らもミスできないし。上の人たちは言うからにはしっかりやる人たちだったし。それで調子を高めて優勝できたので。だから練習から意識していきたい。試合うんぬんより、とにかく練習からの雰囲気作り。これからは盛り上げることと、緊張感を出す練習にすることを自分的には意識します。声を出すことはすんごい得意なんで(笑)
——ところで、今年は日本代表として東アジア大会でメインの司令塔を務めましたが、大神選手が目指す司令塔の像というのを教えてください。
自分はあくまでもディフェンス重視で、ディフェンスからリズムを作るガードを目指しています。サンさん、ひらり(桜庭珠美)さんと一緒に出来たことはすんごい財産ですよ。2人ともディフェンスをタイトについて、サンさんは切り崩して、ひらりさんはパスで振る。自分は欲を出して両方できるようになって、その2人プラス、ディフェンスをつけて大神雄子にしたい。前までは1対1でどんどん点数を取ろうと思っていたんですけど、今は切っていってパスすることや、フロアバランスを考えることが多くなりました。今シーズンはアシストも伸びてるんですよ。司令塔としてクレバーというかスマートな選手になりたい。
皆さんが思っている大神雄子のキャラは強引に行って「大神イケイケ!」だと思うんだけど、自分が目指している像はちょっと違うんですよ。自分的にはゲームの流れを読めてコントロールして、なおかつディフェンスからブレイクに走って、必要な時は点を取る。ポイントガードとして一番最高の形を目指したいなと。とことん!
——そういう言葉を聞くのははじめてです。いつからそう思うようになったのですか?
いやあ、最近です。今年に入ってからですよ。去年まではがむしゃらにやっていたから。スタッフとゲーム内容について話をするようになったり、ドライブに対して合わせのパスが出せるようになったりして、けっこう駆け引きが面白くなったのが今年からです。ディフェンスを読むようになったのも今年から。それは今年の日本代表で、荒さんのもとでシステマチックなJALのオフェンスを勉強したことも大きかったと思う。
——それでもやっぱり、大神選手は得点面で期待される部分はあります。そんな時はどうしますか?
それはですね、ゲームの流れで自分が取るときは絶対にいきます。自分が得点を取る指示もあるので。それがなくなったら大神雄子じゃないっすから!
質問コーナー(ホームページに寄せられた質問にお答えします!)
●短い髪が似合うシンさん。今までで一番長かったのはいつですか?
一番長かったのは小3でアメリカから帰ってきた時(父親の仕事の影響でロサンゼルスに一家で転勤)。しかもおかっぱ(笑)。英語があまり通じないから地元の床屋だとどんな髪型にされるか分からないし、一応女の子だしってことで、お母さんに切ってもらっていたんですよ。だから、お母さんもお姉ちゃんも自分もみんな同じ髪型(笑)。オンザマユゲで日本人形みたいな(笑)。自分の場合は気合いを外見から表すタイプで「気合いで髪切りました!」みたいな(笑)。今は伸びているほうだけど、今のところは長くしようとは思わないですね。邪魔くさいです(笑)。あ、前髪だけは伸ばそうかな。
●試合前にすることと、絶対にしたらダメなことは何ですか?
試合前に変わったことをしたらダメ。気負ってしまうじゃないけど。試合前は弱い足の左足、右足の順でテーピングを巻いて、靴下も左からはいて。それから手首のテーピングをして、左足からバッシュを履く。これは一連のリズムなので崩すことなくやります。それはジンクスですごく気にしています。あとは試合前はスポーツ番組をよく見る。スーパーリーグやNBAをやっていたら見るし、K−1、野球、サッカー、バレーとか。スポーツを見て自分を盛り上げて入っていきます。
●ズバリ!どんな男性が好みですか?
自分は前からよく言ってるんですけど、保阪尚輝の顔が好き。目がハッキリしている人が好きかな。今はちょっと崩れてしまったけれど、前の顔は大好き(笑)。サッカーの鈴木啓太(浦和レッズ)とかも好き。性格では仲良くなったゆずの(北川)悠仁さんの性格が大好き。悠仁さんは楽しませながら、人を思う優しさもあって。それが詞とか歌に表れています。オリンピックの時も見に来てくれて涙を流してくれたんですよ。あれはうれしかったですね。情があって熱血な人が好き。スポーツをやっている人がいいですね。
●シンさんに憧れています。シンさんが憧れて、目標にしているバスケット選手を教えてください。
1人に絞れないですね。ディフェンスを抜いてからのプレイはアイバーソンがピカイチだし、パスセンスはキッドだし、2対2の駆け引きがうまいのはナッシュとデンソーのテル(小畑亜章子)さん。JALのセイ(柳本聡子)さんのプレイも好き。JALに関してはWリーグに入ってから驚きが多くて、あの独特な動きができる人はすごいと思いますね。他にもいっぱい。ひらりさん、キコ(榊原紀子)さんの1対1、キラ(池田麻美)さんのうまい合わせ。同期では志村(雄彦、東芝)も頭が良くてうまいプレイをするなあと思う。それと何といっても佐古(賢一、アイシン)さん! 人を使うところとゲームの流れで自分がいくところと使い分けできる。それを全部身につけられたら最高ですね。
●将来の夢や目標を教えてください。
これも前から言ってるんですが、強く主張して言いたいのが日本だけで終わりたくない!自分はアメリカでWNBAに挑戦したい! 日本のバスケットは絶対に海外でも通用すると思うんですよ。それから日本のバスケットを盛り上げたいと本気で思ってます。いろいろ企画はあるんですよ。JBLとWJBLの選手が一緒に運動会をするとか(笑)。ファンの人に「こんなキャラですよ」と知ってもらうとか、何でもいいんです。バスケットを盛り上げるためには、メディアの前でも自分の意見を言わなきゃいけないと思っているし、自分はバスケット界の中でそういう存在になっていかなきゃいけないヤツだと思っています。
構成/小永吉陽子