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2013年1月15日(火)特集

努力のリバウンダー「チームの意識改革をして、チャレンジし続けます」

長部 沙梨選手(トヨタ紡織 サンシャインラビッツ)

長部 沙梨

今回のゲストはトヨタ紡織の長部沙梨選手です。昨シーズンはWIリーグでリバウンド、ブロックショット、スティールの3部門を制し、得点ランキングでは2位。堂々のMVPに輝き、トヨタ紡織をWIリーグ1位に導いたプレイヤーです。今季は1部リーグ制となり、トヨタ紡織はトヨタ自動車と新潟から勝利をあげるものの、7勝15敗の9位で惜しくもファーストラウンド進出はならず。しかし、持ち前の球際の強さを発揮した長部選手は、リバウンド2位(10.68 Avg.)、スティール2位(1.91 Avg.)と奮闘し、上位チームに対抗できる姿を見せつけました。中川文一ヘッドコーチが「チーム一の努力家」と認めるチームの大黒柱に、初の1部リーグ制での自身のプレイや手ごたえ、今後の課題について聞きました。

——今季から1部リーグ制となったことで、これまで対戦したことのなかったWリーグ勢との戦いが繰り広げられました。対戦してみての手ごたえはどうでしたか。

通用する部分もありましたが、全体的に見れば個人対個人の力では差があったと感じました。個人能力では差があるので、チームの機動力で戦うことを目標にやってきました。それが発揮できたときは勝てましたが、個人対個人の戦いになると一気に崩れてしまい、チームの波が大きかったと思います。

——個人対個人になったときに、どの部分で崩れてしまったのでしょうか。

今までWIを相手にしていた選手からしてみれば、やっぱりWリーグの選手とは身長差が気になります。そこで、ボックスアウトの徹底やスピードやシュート力で勝負するのを課題として取り組んできましたが、私自身は身長差を抑えられないときは、波が激しかったと感じています。

——長部選手は4番(PF)の選手です。たとえばJXと対戦するときは渡嘉敷選手とマッチアップしなければならず、身長差は18㎝もあります(渡嘉敷192㎝、長部174㎝)。長身選手と対戦するとき、ディフェンスではどのような工夫をしてマークするのでしょうか。

なるべくボールを持たせないように、押し出すように、押し出すように守るんですけど、難しいです。私はリバウンドを得意としているんですけど、渡嘉敷さんが相手だと全然取れないし、ボックスアウトをしても、上から取られてしまうので、そこをどう押し出すかが課題です。

——今季、中川ヘッドコーチが就任してからは、どのようなバスケットを展開しようとやってきたのですか?

やってきたのは、ボックスアウトの徹底とパッシングです。高さがないチームなので、中川さんからは「ボックスアウトは死にもの狂いでやれ」と言われてきました。中川さんはフリーランスなバスケットを求めているのでパッシング中心ですが、うちは昨シーズンまではエイトクロスを中心に攻めていたので、やっていることはまったく違いました。フリーランスになったことでカッティングとパスのバスケを学びましたし、一人一人がチャンスがあったら攻めるんだ、という意識は強くなったと思います。

——エイトクロスのシステムから、フリーランスのバスケットを構築するには、やはり時間は要しますか。

はい、そうなんです。最初は慣れなかったので合わなかったり、戸惑ったりしたのですが、1対1で攻める意識が強くなったことは良かったので、これをやり込んでいけば、もっと噛み合ってくると思います。

——昨シーズンはWIリーグで優勝しました。長部選手の目から見て、優勝できた要因と、WIチャンピオンチームとして、今季も継続できた点はどんなところですか。

昨シーズンは選手同士でよく話し合っていました。今は何がダメでどうしたらいいか、ダメだった場合は何度でもやってみようと練習をしたり、コミュニケーションをよく取っていたことが良かったと思います。中川さんが来てからは、フリーランスのバスケットを教えてもらったことに対して、ちょっと受け身になっているところがありました。昨シーズンから継続できたのは、チーム全体で頑張ろうという気持ちはあったのですが、中川さんの教えプラス、自分たちの考えを持って動けるようにしていけば、もっとよくなると思います。

——それでは、Wリーグ勢を相手にやれた部分は。

大きい選手が相手だと、外からのシュートや、ドライブしてパスアウトだったり、フェイクしてシュートだったり、スピードで勝負する部分は通用するところがありました。

——今シーズンは、昨季までのWリーグ勢の壁を破ることはできず、ファーストラウンドに進出することはできませんでした。今後、チームに必要なことは何だと思いますか。

一番にやらなければならないのは、チーム全員の意識改革です。目標はベスト8だったんですが、このままでは到達しないと感じました。中川さんによくWリーグ時代の話をしてもらったり、自分も実際に戦ってわかったのですが、WリーグとWIとの意識の差は大きいと感じました。中川さんから見たら、それはありえないような意識の差もあったと言われました。やっぱりWリーグ勢は負けられないプライドがすごいし、プレイが徹底していました。そこを改善していかないかぎり、Wリーグの壁は破れないし、1部リーグ制になった意味がないと思います。チーム全員で戦う意識を高めていって、来シーズンは一つでも上の順位に行けるようにしたいです。

——来シーズンに向けて、個人としての課題は何ですか?

やっぱり、自分の得意であるリバウンドを取り続けること。それと、ドリブルワークを身につければ、もっとスピードあるプレイを生かせると思うので、基本的なことをしっかりと身につけたいです。今シーズンは1部リーグ制でやるのを本当に楽しみにしていましたが、早くもリーグが終わってしまって残念です。来シーズンこそはベスト8入りを目指して、挑戦し続けたいと思います。

質問コーナー(ホームページに寄せられた質問にお答えします!)

●昨シーズン、WIリーグでMVPを受賞した感想を聞かせてください。

MVPは獲れると思っていなかったのでビックリですけど、チームが一つになって勝利したおかげです。私はリバウンドだけは絶対に負けないと思ってやっていて、チームが苦しいときこそ、「自分がやらなきゃ」「もうひと踏ん張り」という思いでやってきました。それが空回りすることもあるんですけど、気持ちだけは負けないでやれたのが良かったと思います。

●トヨタ紡織の選手たちは、バスケに仕事に忙しいと聞きます。一日のスケジュールを教えてください。また、休日は何をして過ごしますか?

朝8時半から15時まで仕事をして、15時半から練習を開始します。30分くらいかけてウォーミングアップをして、16時くらいに全員が集合し、18時半までチーム練習。会社の食堂で夕飯を食べて、その後はシューティングや自主練をして、一日が終了というスケジュールです。会社の敷地内に体育館があるので移動が楽なのはいいですが、寮に帰ったら洗濯して寝るだけの毎日ですね。平日は会社があるので、試合のないオフ期間は土日が休みになります。休日は部屋の掃除をして、近場で映画やショッピングに行くくらいかな。

●コートネーム「シノ」の由来は?

トヨタ紡織に入部したときに、1つ上の先輩たちがつけてくれました。四字熟語で「堅忍不抜」(けんにんふばつ)という言葉があるのですが、「意志が堅く、何事にも耐え忍ぶ」という意味で、耐え忍ぶの「シノ」からつけてもらいました。周りから見るとそういうイメージ…なのかな? 高校の時はコートネームはなくて、名前で「沙梨(サリ)」と呼ばれていました。

●大切にしている宝物は何ですか?

これは恥ずかしいのですが…愛知に来るときに、両親からもらった手紙です。お父さんが書いてくれました。内容は「頑張れ」ということが書いてあるのですが、お父さんの言葉が、心にジーンときました。手紙は引き出しの奥に大切にしまっておいて、今では見ることはありません。というか、見たらいろいろな思いがこみ上げてくるので、見ることができません…。大切にしまって、心の支えにしています。

●リバウンドが得意な長部選手。インサイドプレイヤーとしては小さいほうですが、リバウンドを取るコツを教えてください。

いちばんは「取るんだ!」という気持ちです。ボックスアウトをすることは当たり前ですが、それだけじゃなく、絶対に取る気持ちがないと身長が大きなプレイヤーに勝つことはできません。ボックスアウトからボールに飛びつくように取りに行きます。また、身長の小さい選手はオフェンスで跳び込みリバウンドを意識することも大切。味方がシュートを打ったら、リングをめがけて走り込みます。タイミングと気持ちが大切です。


インタビュー&構成/小永吉陽子