- 2004年9月14日(火)特集
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見ている人が「面白い」と思うバスケットをしたい。“勢い”では負けません!
矢野 良子選手(JOMO サンフラワーズ)

第1回目のゲストは、今シーズン5連覇を目指すJOMOの新キャプテン矢野良子選手。昨シーズンは初のプレイオフMVPを受賞、仙台のオリンピック予選での活躍など、今や日本を代表するポイントゲッターに。ここ一番で、得意のフェイダウェイシュートや3ポイントを決める勝負強さを持ち、アテネ・オリンピックでも、ポイントゲッターとして活躍する姿はファンに勇気を与えてくれました。オリンピックで目標の決勝トーナメント進出を果たせなかったことに悔しさをにじませながらも、新たな目標に向かって走り始めた矢野選手に、今シーズンに向けての抱負を聞きました。
——まずはオリンピックお疲れ様でした。実際にオリンピックで戦った感想を聞かせてもらえますか?
決勝トーナメントにどうしても上がりたい、上がってアメリカと試合がしたいというのが目標にあったので、ギリシャに負けて決勝トーナメントに上がれなかったことはすごく悔しかったです。いくらアウェイで厳しい状態だったとしても、6点離した時に「もっと、ここをちゃんとやってれば」という思いが残りました。私だけに限らず、みんななんですけど…。それに、最後の3ポイントを決められなかったことが悔しい。そういうのを振り返ると、国際大会での自分の精神的な弱さというか、まだまだだなと感じました。ギリシャ戦のような試合を経験すると余計に分かることなんですけど、もっともっと強い意志を持って戦わないと、ああいうところで勝てないんだなあと思いました。
——オリンピックが終わり、リーグに向けて気持ちは入れ替わりましたか?
正直言うと、オリンピックが終わって脱力感はありましたね。リーグが既にひとつ終わったみたいな。でも今年はキャプテンですし、気持ちを切り替えて練習を再開しました。
——キャプテンに任命されて、意気込みはどうですか?
今までも、中学高校と節目節目でキャプテンはやりましたが、JOMOのキャプテンとなると話は別ですよね。キャプテンはチームをまとめなきゃいけないし、かといって自分のことも疎かにできないし。今年は大御所と言ったら失礼ですけど(笑)、上の3人(浜口、大山、楠田)が抜けて若くなった分、弱くなっている部分が絶対にあると思うんです。だからレベルを上げていけるよう、その辺は土台をしっかり作っていきたいかな。
——やっぱり、浜口、大山、楠田選手の穴は大きいですか。
うーん…。表現が難しいんですけど、弱くなったというより、ボロが出やすいって言うか、すぐ妥協したり、粘りがなかったり。練習でも最初のうちは走っているけれど、きつくなると気持ちが下がって走らなくなっちゃう。それは精神的に弱い部分で私も若い時はそうだったし、そんな時に上の先輩たちが声を掛けて引っ張ってくれたんですね。今度は自分が一番上なので、そうやっていかないと。チームメイトからは「うざい」と言われるかもしれないけど、ちょこちょこ声を掛けるようにしようと思っています。
——キャプテンから見て、今年のチームはどんなチームになりそうですか?
そうだなあ…勢いですかね。年齢が若くなった分、勢いとかノリはあると思うから、「勢いで走ってしまえ」みたいな(笑) チームのみんなにも言ったんですけど、「私たちは若いし、勢いもあるし、脚力もあるんだし、走れるんだから走ろう。バスケットはディフェンスが来る前に走ってレイアップすれば一番楽なんだよ」って。それは、きちんとしたバスケットをやらないという意味ではなくて、はじめから堅く入ってもできないと思うので、勢いを武器にしていこうと。勢いだけはどこのチームにも負けたくないですね。
——今年は若くて勢いがある“新生JOMO”に期待したいと思います。
そうですね。上の3人(浜口、大山、楠田)が中心となって10何年もやってきたバスケットからは「変わった」という声が聞こえてくることは予想しています。でもある意味「バスケットが面白くなったね」と言われるようにしたい。バスケットってルールが詳しいからよくわからないって言われるけど、さっき言ったように「勢いで行ってレイアップで終わっちゃえ」じゃないけど、前に前に走るバスケットは、見ている人は面白いと思ってくれるんじゃないかな。そういうバスケットがやりたいです。
質問コーナー(ホームページに寄せられた質問にお答えします!)
●アテネ・オリンピックで印象に残ったことは何ですか?
男子アメリカチームがコケたことが印象に残っているのと、他競技の選手と知り合いになれて輪が広がったことが、楽しかったし良かったです。
●矢野選手はボディバランスがいいと言われていますが、意識的に鍛えている筋肉はありますか? また腹筋は割れていますか?
腰が悪くならないように腹筋を鍛えているのと、もともと下半身が強いので、今は上半身を鍛えて全身バランスよく筋肉をつけることを心がけています。下半身がしっかりしていれば、シュートがぶれないというのはありますね。腹筋は微妙に割れています(笑) 昔はむちゃくちゃ割れていたんですが、今は皮が一枚乗っかっていて、その中で割れています(笑)
●3ポイントシュートは一日に何本打っていますか?
以前はシュートフォームの感覚がつかめるまでは、1日500本イン。これは金さん(前ヘッドコーチ)にシュートフォームを細かくチェックされながら打っていました。シュートフォームが固まった今でも1日に300本〜400本は打っています。これは練習時間だけでなく、練習後とか練習の合間に時間を作ってやっています。打ち込みや反復練習は、体に覚え込ませるために大事だと思います。
●チーム内で仲の良い選手は? 他のチームで仲の良い選手は?
チームではマリ(紺野)。他のチームでシーズンが終わってよく食事に行くのは、船引まゆみ、佐藤ひとみ(以上富士通)、渡邉温子(シャンソン)。同期が多いですね。
●将来の夢、ビジョンはありますか?
インタビューをしたり、芸能関係の仕事に就きたいです。それはスポーツに関わることでもいいし、それ以外でもいい。いろいろな人と触れ合っている中でそう思うようになりました。以前は製菓職人、アロマテラピーなどのマッサージ師とか、手に職がある職業を考えていました。でもまだ先のことです(笑)
●矢野選手にとって、「バスケットの魅力」とは何ですか? また「原動力」となっているものは?
やっぱりシュートを決めること。それに向かっていろんなシュートを覚えたり、自分が「点を取りたい」「シュートを決めたい」という思いが私の今のプレイになっています。
構成/小永吉陽子