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2014年12月2日(火)特集

学び続ける新潟のリーダー「地域を背負うプロ意識こそが私たちのバスケ」

星 希望選手(新潟アルビレックスBBラビッツ)

星 希望

今回のゲストは新潟のキャプテン星希望選手です。拓殖大時代にガッツあるプレイで観る者を惹きつけ、大学3年時にはインカレ優勝に貢献しています。WJBLではプレイ歴5年目ながらキャプテンは今季で3シーズン目。衛藤ヘッドコーチからは「星と心中する」と期待を寄せられるほど、信頼を得ているチームリーダーであり、司令塔です。「オフシーズンに徹底して個人スキルを磨いてきた」という今シーズンは平均10.13得点(11月30日現在)をマーク。意欲的にシーズンに挑んでいる星選手に、チームや個人の目標、そして、もう一つの顔である「高校教師」について聞きました。「いつもしゃべりすぎて、うまくまとめられないんですが、伝えたいことがたくさんあるんです」という星選手の言葉からは、バスケットボールに対する感謝と熱い思いが伝わってきました。

——今シーズンは、どこを重点的に準備してシーズンに臨んでいるのですか。

衛藤ヘッドコーチになって2年目で、衛藤イズムが浸透してきています。チームが始動した時から、個人のファンダメンタルの底上げをずっとやってきました。昨シーズンのいちばんの課題はリバウンドだったので、リバウンドから点を取ることを重点的に準備してきました。

——個人的にいちばん強化してきたところは?

個人スキルを春から磨いてきて、ハンドリングが上達したと自信を持って言えるくらいになりました。バスケットはポイントガードのゲームコントロールが重要なので、私自身の上達が必要です。まだ勉強中ですけど、このオフにやってきたことを出せば、自信を持ってコートに立てると思ってやっています。

——衛藤ヘッドコーチは今シーズンの展望で「星選手と心中する」と発言するくらい星選手に信頼を置いています。衛藤ヘッドコーチとはどのような信頼関係を築けていると思いますか。

新潟に入って今年で4年目なんですけど(1年目は日本航空)、私がキャプテンになって1、2年目は何もできなかったんですけど、衛藤さんはずっと私に声をかけてくれました。特に、「ガードが大事なんだ」という考えをずっと伝えてくれました。ガミガミと怒るのではなく、諭す感じで言ってくれるんですね。

それで私も技術もだんだんと改善してきたことで、今年は衛藤イズムのプレイを出せるようになってきました。いつも言われていのるが「お前が全力でやったことなら俺は信じる」ということです。これが心中するという意味だと思うのですが…。

——「衛藤イズム」とは、どのようなバスケットのことを指しますか。

「バスケットボールを考えてやる楽しさ」です。他のチームはどう考えているかわからないですけど、バスケットボールは「能力がある」「背が高い」「日本代表選手がいる」だけでやるものではないと思うんです。私たちにはその部分がなくてウィークポイントなんですけど、でもそれを劣っていると思うのではなく、逆に、自分で考えてプレイしていきたいです。自分たちで考えてプレイが成功した時はバスケットがすごく楽しくなるものなので、その考えこそが、衛藤イズムだと思います。

——「自分で考える」——それは、環境の面などでいえば、地域の協力で成り立っている「新潟」が特に求められていることでもありますよね。

はい。私たちの環境だからこそ、衛藤さんのバスケができると思うし、私たちもこの環境だからこそ、バスケットを考えて楽しめていると思います。他のチームには真似できないバスケットだし、プロ意識の質が他のチームとは違うと思っています。

——「プロ意識の質」とは具体的に言うと、どんな違いですか?

Wリーグの選手たちはみんなプロ意識が高いのですが、他のチームは企業が母体で、私たちは地域の協力で成り立つチームです。「自分たちは地域を背負っているんだ」というプロ意識が高いです。自分たちは能力がなくても、地域の方やファンに支えられて頑張ることを示せる唯一の存在だと思っているので、そういう意識では負けたくないです。だからこそ、衛藤イズムが浸透してきた今シーズンは結果を出したいんです。

——星選手は新潟の開志学園高校で社会科の先生をしています。教員とWリーグの二足のわらじはとても大変だと思うのですが、教員をしているからこそ良かったと思うことや、バスケに役立っていることがあれば聞かせてください。

(※職業に関連するエピソードは下の質問コーナーにあり。新潟の選手は、関連会社にて仕事をしてから練習や試合に出場している)


はい。学校との掛け持ちは大変なんですが、バスケ選手と教員はどちらもなりたかった自分の夢ですし、バスケだけではない社会を知ることはとても大切なことだと感じています。今はだいぶ生活のリズムがつかめてきましたが、1年目は大変でした。シーズン中は特に自分の時間がなくて、バスケと学校だけの生活になりますし、テスト作りや採点が間に合わなかったり、遠征先にレポートを持っていくこともあります。

学校の先生という仕事もバスケ同様に地域に支えられ、地域に貢献していることなので、自分は自信を持って続けられます。何より、私にはたくさんの生徒が応援してくれます。生徒にカッコ悪いとこを見せられないので、毎日必死なんですよ(笑)

——シーズンが始まっていますが、今シーズンの抱負を聞かせてください。

昨シーズンはうちだけアップセット(番狂わせや上位チームに勝つこと)を起こせなくて悔しかったです。「いいゲームだったね」ではなく、試合に勝ち切ることが目標です。

私たちのチームは得点が低いことと、リバウンドを取ることが課題で、どちらも強い気持ちがないと達成できないと思います。劣勢になった時に、ただやるだけではダメ。ただやっているだけでは、背が高く能力あるチームのほうが勝つので、そこをチームとして戦えなかったことが昨シーズンの反省です。

今年は劣勢に立った時に気持ちを強く持って、その思いを上位チームにぶつけたいです。それには、チーム全体が意識改革をして、行動に移していくことにチャレンジしていかなければなりません。私自身は、もっともっとバスケットを学んで上達していくシーズンにしたいです。


質問コーナー(ホームページに寄せられた質問にお答えします!)


●コートネーム「ラズ」の由来を教えてください。

大学に入学した時に2つ上の先輩につけてもらいました。私は「希望」と書いて「のぞみ」と読むのですが、星希望という名前が宝塚(歌劇団)にいそうなので、「たからづか」からとって「ラズ」になりました(笑)。ラズは気に入ってます。よく「ラズベリーのラズ?」とか聞かれるんですが、そんな可愛いものではありません(笑)

●一日のスケジュールはどうなっていますか?

私の場合は朝は8時に出勤し、15時過ぎまで高校で授業。16時半頃から地域の体育館に移動して練習。21時頃に帰宅。それから食事して、洗濯して、勉強して、お風呂に入るともう日付を超えいてますね。勉強や学校の仕事も欠かせないので、一日のスケジュールは朝から寝るまでぎっしりです。

●いちばんリラックスする時間はいつですか?

リラックスする時間は……ありまないです。というか、ほとんどないですね。唯一、練習のあとにみんなでご飯を食べに行く時が楽しいひと時です。自炊なので練習後に作るのが面倒くさい時はチームメイトとよく食事に行きますね。うちのチームはみんな働いていますが、各職場に配慮してもらって休日をもらっています。その休日にそれぞれがリラックスする時間を作っていると思います。シーズン中は大変だけど、やりがいがあるので精一杯頑張りたいです。

●Wリーグで仲のいい選手は? 憧れの選手は?

仲がいいのは日立ハイテクの池内侑里選手。拓殖大学の2つ下の後輩で、大学時代からじゃれ合ってます(笑)。Wリーグに入ってからも色んな話をしています。憧れているのは三菱電機の橋本和子さん。橋本さんの落ち着いたゲームメイクが好きで、橋本さんがいるからチームが成り立っているという存在感がすごいです。目標の選手であり、尊敬しています。

●高校の先生になった理由を教えてください。

私たちのチームはバスケをする以外に、グループの関連会社で働いています。私はずっと教員になるのが夢で、「学校関連で働けたらいいな」と思っていたんですが、なんと開志学園高校での勤務が決まりました。社会科の教員の資格を持っているので、それが役立ちました。今はバスケと教員の仕事ができて、やりがいがある毎日に感謝しています。


インタビュー・構成/小永吉陽子