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2004年11月15日(月)特集

ケガから復帰し、選んだバスケへの道。 今はWI優勝に向けて走り続ける!

岩水麻理子選手(東京海上日動 ビッグブルー)

岩水麻理子

今回のゲストは、現在、WIリーグで首位を走る東京海上日動のキャプテン・岩水麻理子選手です。日本体育大時代はユニバーシアード代表に選出され、東京海上日動でも高い身体能力を発揮している岩水選手ですが、日体大4年時に右膝の前十字靱帯断裂という大ケガを負い、1年間のリハビリを経てからWリーグに入団したという苦労人でもあります。今回はあまり知られていない岩水選手の試練と経歴、今後の目標について聞いてみました。

——岩水選手といえば、この話から聞かなくてはなりません。忘れもしない日体大4年の時、秋のリーグ戦中に膝の前十字靱帯を断裂してしまいました。当時、日体大は愛知学泉大と実力を二分していて、インカレでもいい勝負を期待していたのですが…。

最後の最後でケガをしてしまって、インカレは絶望的でした。日体大の4年間というのは、無名だった私を鍛えてもらったところだったし、4年間頑張ったのに…という思いですごく悔しかったし、チームに申し訳なかったです。

——それが、決勝リーグ・愛知学泉大戦の最後の最後に試合に出たんですよね。膝にサポーターをぐるぐる巻いて…。

試合はボロ負けだったんですけど、残り7秒に出させてもらいました。それでみんなが私にボールを回してくれて、3ポイントが決まったんですね。それがすっごくうれしくて…。

——あの時、会場中が拍手を送っていました。感動的だったことを覚えています。

ケガをしてしまったことで「将来どうしよう」って悩んでいた中で迎えたインカレでした。だから、つらい中でもあの3ポイントが決まったことで納得ができたというか、バスケへの思いが切れたというか、満足してしまったというか…バスケットを辞める決心がついたんです。今思うとリハビリをして再起を目指せば良かったんですけど、その時はWリーグのような強いチームでやっていく自信がなくて…。

——日体大を卒業後、日体大の助手(教授のサポートとして授業を教える)と女子バスケット部のアシスタントコーチをしていましたが、いつ頃から選手としての復帰を考えたんですか?

卒業してすぐ、夏には復帰を決意して手術に踏み切りました。最初は、教員になりたいという夢もあったので、助手とアシスタントコーチとして頑張っていこうと思っていたんですよ。それがコーチをしているうちに、見ているだけじゃ納得がいかなくなって。「まだできるんだったらバスケをやりたい!」という気持ちがものすごく出てきまして。バスケを続けなかったら手術はしなかったと思います。

手術をしてからが大変でした。助手の仕事とリハビリをしながらチーム探しが始まりました。もう、強いとか弱いとか関係なく、バスケットができるならどこでもいいと思っていました。日体大の先生方やいろいろな方にお世話してもらって、それで運良く、東京海上に決まったんです。

——東京海上ではすぐに復帰はできたんですか?

いえ。完璧に復帰できたのは入社して1年目の冬くらいですね。2年間もまともに試合をしていないので最初はプレイをするのが怖かったです。

——岩水選手の躍動感あふれるプレイを見ていると、ケガがあったことを忘れてしまいますね。自分の持ち味はどんなプレイだと思いますか? 

幸せなことに、大学で「走ることとディフェンス」を徹底してやってきて、今のチームもそれがチームカラーなので、そのまま出せるのがうれしいですね。

たいていの人は、バスケの楽しさといったら「シュートを決めること」と言うと思うんですよ。でも、私の場合は日体大に入った時にうまい人がいっぱいいてシュートだけでは生きていくことができなかったので、ディフェンスを頑張ろうと思ったんです。ディフェンスの大切さを教えてくれたのは日体大の2年先輩のダイさん(石田佳子、元日本航空)。ダイさんのディフェンスを見ていると、こういう貢献のしかたもあるんだなと勉強になりました。それから「私はディフェンスでチームを支えよう」と思うようになりました。地味だけど、ディフェンスと走ることが大好きです。オフェンス・チャージングを取ったら「やった!」と思いますね。

——現在、WⅠリーグでは全勝を飾っていますが、その要因と今シーズンの目標を教えてください。

今までは「誰かがやるだろう」と思ってチーム内に甘さがあったんですが、今年は一人一人が「優勝して1部(Wリーグ)に上がろう!」という思いがあります。今まで勝てなかったアイシンや甲府に勝てたのはうれしいけれど、「勝った」というより、挑戦してる気持ちのほうが大きいです。「東京海上日動とやるのはイヤだな」と思われるためにも、これからも徹底的に走って自分たちのバスケットをしたいですね。

質問コーナー(ホームページに寄せられた質問にお答えします!)

●岩水選手は昨シーズン、ブロック・ショット王を獲得しています。そんなに身長が高いわけではないのに、何かコツがあるのですか?

チームメイトにはズルイと言われてるんですけど、私、身長は173㎝なのに、リーチが183㎝もあるんですよ。だから、ブロック・ショットのコツもタイミングではなく、手の長さを生かした自分なりの守り方があります。詳しくはここで言っちゃうと、バレてしまうので私のプレイを見てください(笑)。でも今シーズンはそんなに個人成績にはこだわっていません。優勝するのが一番!

●大学時代、Wリーグを通じて仲のいい選手は誰ですか?

仲がいいのはカナ(日本航空・矢代選手)です。唯一、大学の同期でWリーグでプレイしているのはカナしかいないんですよね。最近一緒に遊んだんですけど「お互いに全勝で優勝したいね」と話しました。

●チームで一番、プレイでの相性がいい選手は誰ですか?

常に走りたいと思ってプレイしているので、うちの松本のような速いガードと相性がいいです。松本はパスが前に来るので合いますね。逆に宮本さんはコントロールがうまいので、違うタイプのガードがいてチームのバランスはバッチリです。

●今ハマっているもの、好きなもの〈こと〉は何ですか?

好きで集めているのは帽子。会社にはかぶっていけないので、会社以外のところに行く時はかぶっています。あとは一発芸かな(笑)。お笑いブームに便乗しています。今年引退したクックさん(平野さん)と同じ職場なんですが、今シーズン優勝した時に披露するために一緒に練習しています(笑)

●仕事とバスケットの両立は大変だと思いますが、シーズン中のスケジュールはどうなっていますか?

仕事は「海外旅行グループ」に勤務して、海外で事故に遭った人の対処をしています。朝の9時から夕方5時まで仕事をして、夜7時過ぎから9時半頃まで練習という毎日です。体育館を出るのが10時過ぎることもありますね。以前は埼玉の自宅から通っていたので時間的に大変でしたが、今年はバスケットに集中したいので、通いやすいところで一人暮らしを始めました。試合が土曜の時は日曜が休みになりますけど、日曜に試合がある時は休みがないですね。たまに有給を取って休んだりしますが。仕事もバスケットも頑張っていきたいです。

構成/小永吉陽子