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2004年11月1日(月)特集

目下、開幕から6連勝! 今シーズンは「一人一人が主役」のチームを目指します

薮内 夏美選手(日本航空 JALラビッツ)

薮内 夏美

今回のゲストは、現在Wリーグの連勝街道をひた走る日本航空の司令塔・薮内夏美選手。高校、短大時代はセンターとしてパワープレイを展開してきましたが、日本航空入社後はポイントガードに抜擢され、175㎝の身長を生かした大型司令塔として魅力あふれるプレイを披露しています。日本代表としても、今年のオリンピック予選、準決勝・韓国戦での活躍は記憶に新しいところです。日本の次代を担う司令塔に名乗りをあげた薮内選手に、はじめて出場したオリンピックのこと、今シーズンの意気込みなどを聞きました。そして、薮内選手の意外な素顔にも注目!

——10月31日に注目の天王山であるシャンソン戦がありました。シャンソンとの接戦を制した感想を聞かせてください。

「うれしい」の一言です。シャンソンはファイナルまで上がっていくチームだと思っているので、長い目で見て勝ち負けより内容を重視して戦おうということでやりました。でも、勝ちはしましたが、リバウンドやセカンドショットでやられた面もあったし、課題がいっぱい出ました。

——ここまで6戦全勝している要因は何だと思いますか? また、今年はどんなチームを目指していますか?

確かにここまで連勝していますけど、課題はしっかりと残ってるんです。その課題を調整しながら次の試合、次の試合というふうに臨んでいます。勝っている要因としては、監督から教わっているノーマークを作る動きを必ずやって、チャンスを作っているからだと思います。あとはシュートを入れるかどうかなんですが、そこがまだ甘いですね。

今年のチームは「一人一人が主役になる」ことを目指しています。私がポイントガードをやっていますが、フォワードもセンターもチームをリードして、ゲームメイクができて、点が取れるというような。今までは先生(林ヘッドコーチ)から教えてもらった通りにしかできなかったんですけど、今年は誰がどこでボールを持っても主役になってゲームを作っていけるチームにしたいと思います。うちは試合に出ている5人全員が動きを合わせて得点を取っていくチーム。その合わせは練習をしっかりやってできるものなので、これからもっと練習を積んで、完全な形にしていきたいです。そのためには時間が足りないくらいなんです。

——司令塔である薮内選手が「一人一人が主役」になる場面を多く演出しそうですね。ところで、司令塔として心がけていることは何ですか?

やっぱり身長を生かしたパスワークをしっかりやりたいですね。先生が「この身長でガードをやったら世界でも有効だ」といってポイントガードにコンバートしてくれたので、それを生かしたいと思います。スピードや技術はフットワークや練習をすればつくと思いますが、身長は練習しても大きくならないから、スピードに対応できれば身長では絶対に負けないと思っているので。最近、ようやく先生の言うことが理解できるようになって、ここ2、3年で、バスケットの面白さが分かるようになりました。自分でプランを考えながら試合をやっていくのは、自分がシュートした以上にうれしいです。

——話は変わりまして、日本代表のことをお聞きします。アテネオリンピックに出場した感想を聞かせてください。

うーん…。世界の高さとパワーのすごさを感じました。それに対して、日本がどう戦っていかなければならないのかを考えさせられましたね。正直、試合にはもっと出たかったですよ。出た試合ではドライブインは通用したんですけど、もっとやれたとも思います。世界に出ると自分なんて“ちっぽけ”だなぁというのは感じました。世界は本当にすごい。

——日本代表ではシューティングガードとして試合に出ていましたが、ふだんのポジションと違って戦い方が難しかったのではないですか?

確かに、自分がポイントガードとして世界でどれだけ通用するか試してみたいという気持ちはありました。でも、得意のドライブインを出す時は自然とシューティングガード的な役割になっているし、そういう時はエース(大山妙子選手)さんがコントロールしてくれたし、シン(大神雄子)と出ている時は、シンは攻める選手なので自分がコントロールしたり。あまり固定概念にとらわれず、状況を見て攻めたりコントロールしたり、臨機応変にやっていましたね。そういう意味では勉強になったと思います。

——最後に今年の目標と、選手として目指しているもの、たとえば理想の選手などがいましたら教えてください。

今シーズンの目標は「優勝」。それしかないです。自分はそれに向かって頑張るだけ。

選手として目指しているのは、チョン・ジュウォン(元韓国代表の司令塔)さんです。ポインガードとしては私と身長が同じくらいだし、あの人のように何事においても冷静でいて、役割をしっかり果たす選手になりたい。あとはエースさんのようなバスケットの考え方にすごく憧れています。周りの状態にすぐに対応できるのは、エースさんが一番だと思います。もう引退されてしまいましたが、エースさんと日本代表で一緒にできて本当に良かった。チョン・ジュウォンさんのようなポインガードで、エースさんのような対応力を持つ選手になりたいですね。

質問コーナー(ホームページに寄せられた質問にお答えします!)

●林ヘッドコーチは怒鳴っていることが多いですが、バスケットへの情熱は人一倍に見えます。薮内選手にとって林ヘッドコーチの存在は? 

私にとって林先生は師であり、神です。テレビで林先生が怒っているシーンがよく映るので「怖い」というイメージがあるかもしれませんが、実際は怒ることは怒りますが、それは自分たちができてないから怒るのであって、そのあとの説明とかフォローとかしっかりしているし、思いやりのある方です。バスケットについてこれほどまで細かく習ったのは初めてだし、私をポイントガードにコンバートしてくれたのも林先生だし、学びたいことはまだまだありますね。

●チームガイドの「嫌いな…」の欄に「カナの茨城弁」とあり、矢代選手の「嫌いな…」の欄には「ナツの方向音痴」と書いてあるのですが、その真相は?

その通りです(笑)。私も関西弁が出てしまいますけど、カナは一生懸命にしゃべってる時に茨城なまりが出ます(笑)。たとえば試合中に「歩いた」というのを「あるってる、あるってる」とか言うんですね(笑)。必死になっている時ほど茨城弁が出て、私はそれがあんまり好きじゃなくて。

私の方向音痴というのは本当にヒドイんです。入社したての頃は、最寄りの駅から歩いて3分で着く寮まで40分かかったこともあったし、遠征先ではホテルのエレベーターの乗り場が分からなくて何回も同じところ回ってしまったり、コンビニに行って帰ってくるのも一苦労(笑)。感覚的に動いているので、もちろん地図なんて読めないし、一人にするとどこ行くか分からない(笑)。そんなお互いが嫌いですね(笑)

●クールだと思われがちなナツさんですが、実はとても面白いキャラだと聞きました。チーム内では主に誰とボケ&ツッコミをしていますか?

ズバリ、矢代選手ですね(笑)。あ、もちろん私がツッコミで矢代がボケです(笑)。クールと思われがちというのは本当ですね。これはもう、初対面の人10人中10人が「怖そう」と言います。見た目としゃべったギャップが激しいとも。自分ではクールだとは思ってないんですけど、確かに黙っている姿を鏡で見たりすると「怖そうかな」と思いますけど(笑)。根が関西出身というか、楽しいことを探して日々生きていくみたいな。細かい指摘をしたり、誰もがそういうの発想しないだろうっていうのを言ったりします(笑)

●休みの日の過ごし方やリフレッシュ方法は何ですか?

休日はしっかり食べて寝て、マッサージで癒される。それが私のリフレッシュ。マッサージはアロマを使ったリラックス系が好きですね。

●客室乗務員とバスケット選手の2足のわらじを履いていらっしゃいますが、両立は大変ではないですか?

そうですね。大変といえば大変なんですけど、シーズン中はバスケットに専念させてもらっているので、そういう意味では大変ではないです。バスケットの時はバスケットをしっかりやればいし、シーズンオフになると、国内線の客室乗務員としての仕事に切り換えてやっているので。ただ例年、12月にリーグがひと段落した際にもフライトは入ったりします。フライトの訓練で覚えることが多い時は忙しくなりますが、仕事もバスケットもどちらも大切なものなので、やりがいを感じますね。

構成/小永吉陽子