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2005年4月1日(金)特集

勝てなくて苦しい4年間は人間として成長できた時期でした

三木 聖美選手(シャンソン化粧品 シャンソンVマジック)

三木 聖美

5年ぶりにWリーグを制覇したシャンソン化粧品のキャプテン、三木聖美選手が今回のゲスト。三木選手は折尾中2年次に全国制覇。福岡選抜として全中オールスター優勝。名古屋短付高(現桜花学園高)では3年間で8冠を達成。ジュニア代表では世界選手権に出場し、得点王にも輝いているバスケットの“超王道”を歩んできたプレイヤーです。シャンソン入社後も攻撃力を生かしたPGとして優勝に貢献、ベスト5も受賞。今シーズンは4年間優勝できなかった思いをすべてぶつけ、見事に優勝を果たしました。プライベートでは、小学校時に感銘を受けた車椅子バスケをこよなく愛し、障害者スポーツに関わることをライフワークとする一面も。そんな三木選手に優勝直後の心境を聞いてみました。

——Wリーグ優勝おめでとうございます。優勝した感想を聞かせてください。

一言で言うと苦労した分だけ喜びは大きかったです。優勝した時に一番に浮かんだのは、優勝できなくて引退したり、移籍した先輩たちの顔…。先輩たちが試合を見に来てくれたんですけど、ほんと良かったと思いました。

——その勝てなかった4年間というのは、どんな思いで戦っていたのですか?

エナジー(JOMO)に勝てなくて、みんなで話し合ってやってもそれでも勝てない4年間が続いたので、本当につらくて苦しかったです。だけど振り返ってみると、プレイヤーとしてよりも、一人の女性としてこの4年間はすごく大切な時間だったと思うんです。バスケットではいろいろな状況が重なってうまくできなかったりもしたけど、その中で人のせいにしないで乗り越えたというのは自分の中では良かったというか、自信がついたと思います。

——内面的に成長できた4年間だったんですね。

そうだったと思います。今までもいろいろあったけど、この4年間が自分の人生の中で一番キツかった。その中でいろんな人に出会って話を聞くことができたのは良かったですね。鄭理事(監督)やオンニー(李ヘッドコーチ、韓国語でお姉さんの意味)からも教わることができたし。様々な出会いの中で自分の悪いところや意見を言ってくれたり、そういう人がいたことがありがたかったです。これから生きていく中でバスケットでの人間関係もそうだし、それ以外の友達や仲間との関係だったりを学べた時期でした。

——今シーズンは、ようやくファイナルでチームが仕上がりました。チームが向上するターニングポイントはどこだったのですか?

まず、今シーズンはオンニーとリズ(相澤選手)さんが合流するのが遅かったんですけど、開幕前の練習ゲームではうまくいってたんですよ。だけど、ミラ(永田選手)さんとマッキー(江口選手)がオリンピックから帰ってきた時には、しかたないんですけど全然違う風になっちゃって。リーグ前だったので「こりゃー大変だなー」と。一番のターニングポイントは、リーグ一戦目の日本航空に負けた時ですね。試合のあと上級生だけでご飯を食べに行って、そこで自分たちの思っていることを全部言い合ったんです。そこからだいぶ雰囲気が良くなって練習中も噛み合ってきて、これだったらイケるんじゃないかなーと。

——でも、オールジャパンでは日本航空に負けてしまいました。

オールジャパンの時は、その噛み合ってきた練習とはまた違う課題が出てきたんですよ。全然ダメだった課題じゃなくて、「もっとこうしたほうがいい」とかレベルアップした課題。ファイナル用のオフェンスやディフェンスも練習始めましたし。

——だんだん良くはなっていても、ファイナル1戦目は日本航空に完敗。すぐに気持ちを切り替えられたのですか?

私、ハッキリ言って1戦目は負けると思ってたんです(苦笑)。勝負は2戦目だとはじめから思っていて。それは、ファイナル用のディフェンスがまだ機能してなくて、でもオンニーはそのディフェンスを押し通すと思ったので。1戦目の修正をすれば2戦目からはアジャストできるだろうと思ったんです。だから1戦目は負けるだろうなあと。

——ファイナルでは、まさにそのディフェンスがカギでした。そのディフェンスが機能して、オフェンスも良くなったと。

そうです(笑)。1戦目負けた時なんて、大差で負けたのに更衣室ではディフェンスの対応の話をしていました。でも2戦目勝った時が怖いところで、オンニーからは「まだやることはいっぱいあるよ!」と言われてチームが引き締まりましたね。リーグ中もチームが行き詰まるとオンニーが「私たちが目指しているのはファイナルでしょ。私がファイナルまで何とかするから」って言ってくれたので、すごく心強かったですね。

——ところで、三木選手といえば、思い切りのいいオフェンス。これからはどんなプレイヤーを目指したいですか?

今年に関して言えばリズさんが入って2ガードだったんですけど、やっぱり自分の良さを出してガンガン攻めないとチームも自分も勢いに乗れないと思ってたんですけど、でも途中からは、リズさんの調子いい時はちょっと引いてみようと思うようになったんです。そういうのが自然にできるようになってました。今までは頭では分かっていても「できないな〜」というのがあったんですけど…。でも、そうしないと優勝できないというのがこの4年間で分かったので(笑)。ガードなので点が欲しい時は取りに行くし、その場で適応できるというか、頭を堅くしないで柔軟なプレイを心がけたいです。

質問コーナー(ホームページに寄せられた質問にお答えします!)

●ヘアスタイルについてこだわりがあれば教えてください。試合中はおだんごヘアが多いようですが、髪の毛は伸ばしているのですか?

ヘアースタイルですかぁ!? 今は伸ばしているんですけど、いろんな髪型をしてみたいです。今までもいろんな髪型もしているし。髪の毛は長い方が好きですね。

●日韓戦が終わったあと、オフは何をする予定ですか?

友達と旅行に行く予定です。あとは福岡の実家に帰って家族と旅行に行きます。お父さん、お母さん、お姉ちゃんと行きます。 楽しみです。

●尊敬しているバスケッ選手はいますか? また他競技で好きなアスリートは誰ですか?

尊敬しているのは、プレイヤーではないですけれど井上先生(眞一、桜花学園高ヘッドコーチ)と、あとオンニーと鄭理事です。井上先生は私のバスケットの基本となっている人。人間的にも懐が深いというか、何をやっても対応力があり、いろんな人の意見を聞き入れるところがスゴイなあと思います。鄭理事は試合に出ていない子の気持ちを一番に考えるような優しいおじいちゃんという感じ(笑)。オンニーは思ったことをワッと口に出すんですけど、そこがまた良さだと思うんですよ。日本人って裏表とかあるけど、オンニーは裏表がないし、思ったこと全部言ってくれるからすごいと思います。3人ともバスケットボールにおいても尊敬しています。選手では、NBAをよく見るんですけど、ジェイソン・キッドとアレン・アイバーソンが好き。2人を足して2で割ったような選手が理想かな(笑)

他の競技で好きなアスリートは、車椅子バスケットの日本代表の京谷和幸さん(パラリンピックシドニー、アテネ大会出場)。家族ぐるみでお付き合いをさせてもらっています。考え方が前向きで相談に乗ってもらったりして、すごく尊敬している人です。

●自分の性格を分析すると、どんなタイプですか?

マッキーによく「ズルイ女」と言われます(笑)。ただ普通に生活しているだけなんですけどね。あ、ちょっかいとか、横やりは入れたりしますね(笑)。基本的には楽天家…かな。あまり悪いようには考えないし、落ち込むことはしない。でも一人になると深く考えますね。

●将来の夢を教えてください。

車椅子バスケや障害者スポーツの監督になりたいんですよ。それで車椅子バスケの練習を見に行くようになって、京谷さんとかいろいろな方と出会いました。あとは洋服と雑貨を置いている店を開いてみたい。障害者スポーツの監督だけでは生活していけないので、洋服屋をやりながら障害者スポーツの監督をやってみたい。これはシャンソンに入ってから持ち続けている夢ですね。

構成/小永吉陽子