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2008年4月28日(月)特集

ケガをしたから今のレンがある——一回り成長したJOMOのシューター

田中 利佳選手(JOMO サンフラワーズ)

田中 利佳

今回のゲストはJOMOサンフラワーズのシューター田中利佳選手です。昨シーズンは左膝の靭帯を断裂し、4年ぶりの優勝をベンチで味わいました。今シーズンは待望の完全復帰。シーズンを通してコートを走り回って、アウトサイドからシュートを量産しました。その働きぶりはブランクを感じさせないどころか、格段にパワーアップ。初となるレギュラーシーズンベスト5も受賞し、充実したシーズンを送りました。田中選手に5戦までもつれたファイナルでの激闘、ケガから復帰した思い、3年ぶりに選出された日本代表への意気込みなどを聞きました。

——今シーズン(2007-08)は、左膝の靭帯断裂で戦線離脱した昨シーズン(2006-07)の鬱憤を晴らすかのような活躍ぶりでした。自分自身の手応えはどうでしたか?

ケガから復帰ということで最初は不安があったけれど、思ったより動けました。ケガをしている時に支えてくれた方々や病院の先生、迷惑をかけたチームメイトやファンの方々のためにも、絶対にシーズン最後までやり通そうと思っていたので、優勝することはできなかったけれど、精一杯やれたシーズンでした。

——復帰した今シーズンは、ケガをする以前よりもシュートの確率が上がっていました。この要因は何ですか?

そうなんです。今シーズンはシュートモーションが速くなって、シュート力が安定しました。膝のリハビリで体幹の軸をしっかりさせるトレーニングメニューをやり込んだので、下半身が安定した成果だと思います。

——昨年はケガで試合に出られない中での優勝だったのですが、どんな気持ちでベンチにいたのでしょうか?

素直に「良かった」と思える部分と、自分がコートに立ってない優勝だったので歯がゆいというか、悔しさが残りつつというか…。

——そして今年はファイナルのコートにスタメンとして立ちました。富士通との5戦を振り返って、自身の出来はどうでしたか?

今年は自分が出て優勝したかったんですけど…。ファイナルは緊張するかなと思ったんですが別にそれほど緊張もなく、とにかく楽しんでやろうと思っていました。私の仕事は、テン(山田久美子)さんとシン(大神雄子)が止められた時に点を取ること。5戦目でチームの点が伸びなかったのは私のせいだと思っています。5試合戦うことは、体的にも気持ち的にもこんなにキツイのかと思いました。ファイナルを通しては4戦目はいい出来だったのですが、5戦目は課題が残りました。

——逆王手をかけた4戦目はJOMOのいいところが大爆発でした。特に田中選手はキレが良かった。

はい。私もシンもシュートが当たっていたし、チームディフェンスも良かったし、「これがJOMOバスケ!」という感じで、やっていて楽しかったですね。4戦目はあとがなくてみんなで盛り上がって試合に入ることができたんです。でも4戦目が終わって、5戦目に気持ちを持っていくのが難しかったです。

——ファイナルで負けたのは、何が足りなかったからだと思いますか?

やっぱり、ここぞという時のシュート力と、軸になるところで点を取れなかったところです。私たち周りの選手がそれをカバーできなかったことが反省点です。今年のファイナルに関しては、負けても絶対に泣くもんか、と思っていました。それは去年、富士通の選手たちが泣いていなかったから。富士通の選手は誰一人泣いてないどころか、逆に笑っていたりして、大人なんだなというか、なんでだろうと思ったんですね。だから今年、自分たちが負けて悔しくても胸を張りたかったし、私は絶対に泣くもんかと思っていました。

——今年は2005年の東アジア競技大会以来、3年ぶりに日本代表に選出されました。選ばれた時の率直な気持ちは?

素直にうれしかったです。リズ(相澤優子、シャンソン)さん、リョウさん(矢野良子、富士通)、マックさん(浜口典子、アイシンAW)たちと一緒にプレイできると思うと、うれしくてしかたなかったです。

——12名の代表枠をかけて競争は激しくなっています。自分のアピール点はどこですか?

内海さん(日本代表ヘッドコーチ)は強気でゴールに向かっていくことを私に求めていると思うので、点に絡んでいくプレイをどんどんしたい。自分のプレイをして、最終の12人に選んでもらえるように頑張りたいです。

——3年前の東アジア競技大会では、自分の持ち味が出せず迷いが見えました。今回は、3年前のような迷いはもうありませんね。

はい。3年前は何がなんだかよくわからないまま試合をやっていましたから。3年前に何もできなかった分、今は「やってやろう」と思っています。でも、私は何よりも楽しんでやろうという気持ちが一番強いですね。膝をケガしてからコートに立てる喜びを知りました。だから、日本代表でも考えすぎずに自分のプレイを楽しんでやるだけです。

——膝をケガしたことにより、見えてきたこと、気がついたことが大きかったのですね。

ケガをした時はつらかったけれど、今思えばケガして良かったんですよ、私の場合は。いろんな面で図太くなりました。シュートも入るようになったし、気持ちの面でもタフになりましたし。それまでの私は試合の前になるとすごく緊張してしまって、お腹が痛くなったり「どうしよう」とうろたえていたんです。でも今は全然緊張しなくなりましたよ。「コートにいるんだから、それでけでもいいでしょ」って。1年間を棒にふってしまったけれど、ケガをしてバスケができることが、どんなにありがたいことかわかりました。だから、どんな時も楽しくプレイできたらいいなと思います。

質問コーナー(ホームページに寄せられた質問にお答えします!)

●高校時代は「ヒョウ」というコートネームでしたが、今のコートネーム「レン」の由来は何ですか?

連続性のレンです。膝をケガした時にはオーさん(萩原美樹子、日本代表コーチ、元JOMO)から「今は試練のレンだから、試練を乗り越えろ」というメールをもらって、すごく励まされたことがあります。

●どうしたらそんなに綺麗に3ポイントが入るんですか?

膝をケガする前はそんなに3ポイントは得意じゃなかったんですよ。こんなに打つようになったのは今シーズンからです。私はボールをもらったら、あんまり何も考えてない(笑)。2ポイントも3ポイントも関係なく、距離を考えずに打っています。シュートが入るようになったのは先ほども言ったように、ケガのリハビリトレーニングによって、体幹が安定したから。あと私は「ここで1本決めよう」とか考え出すと入らないので、無心でゴールを狙うようにしています。外しても自分のタイミングならば打つこと。「入らなかったらどうしよう」ではなくて、「いつも強気」で打つことが私のシュートの打ち方です。これで質問の答えになっているでしょうか?

●仲のいい選手は? ライバルは? 憧れの選手は?

仲がいいといったら、シン(大神雄子)ですね。シンとは隠し事が何もないんですよ。ウソも見抜けるし、何でも言い合える仲です。私は「シン」と呼びますが、シンは私のことを「リカちゃん」と呼びます(笑)。ライバルはみんなライバルですよ。どこのチームにも負けたくない選手がいますね。憧れはやはりエースさん(大山妙子、元JOMO)です。ここという場面で決められる勝負強さに憧れます。同じポジションということでエースさんからはよくアドバイスをもらっています。

●今までで思い出の試合は何ですか? 超活躍した試合も教えてください。

一番思い出に残っている試合は今シーズンの復帰第一戦。というと開幕戦ですね。「やっと帰ってこれたー」という思いだったので、今シーズンの開幕戦は思い出です。ディフェンスでは活躍したとはいえないんですが、オフェンスの出来がすっごく良かったんです。それから超活躍した試合というのは、今回のファイナル4戦目ですかね。私のシュートも入りましたが、チームのディフェンスも激しくて良かったです。あれが私たちの目指す「JOMOバスケ!」なんです。

●休日はアウトドア派ですか? インドア派ですか?

私は引きこもりです(笑)。完全にインドア派ですね。外に出るタイプに見られがちだけど、休みの日はほとんど家にいます。家でDVD見たり、パソコンいじったり、テレビ見たり、ダラダラしています。それで夕飯になると外に食べに行く感じですかね。見かけはキャピキャピしていると言われるんですが、私って実はポジティブなネクラなんです(笑)

インタビュー&構成/小永吉陽子