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2006年4月5日(水)特集

「今を頑張らない者に次はない」熱きハートで優勝に導いたチームリーダー

相澤 優子選手(シャンソン化粧品 シャンソンVマジック)

相澤 優子

今回のゲストはシャンソン化粧品2連覇の立役者、相澤優子選手です。相澤優子選手は92年度からシャンソンで6年間プレイし、その後、一度Wリーグから退いて地元宮城の東北学院大に入学。インカレでベスト4、国体で優勝を果たすなど大活躍を見せ、その後、再びWリーグに復帰。富士通で2年間、シャンソンで2年間プレイしている豊富なキャリアの持ち主です。日本航空とのファイナルでは、チームの士気を鼓舞しながら戦う姿に心を打たれたファンも多いことでしょう。今回のインタビューでは激闘となったファイナルを振り返ってもらいました。その言葉には、チームリーダーの“熱き思い”がたくさん詰まっていました。

——優勝おめでとうございます。率直な気持ちを聞かせてください。

まず、本当に長くて「終わったぁ」というのが感想です。ホッとしたというか。「もう座っていい?」「明日からやらなくていい?」みたいな(笑)。ファイナルの間はずっと試合が続いている感じがしたので、ああ終わった〜という気持ち。

——大激戦となりましたが、5戦目までもつれると思ってましたか?

いえ、考えてなかったです。リーグ戦の4クール目ですでに疲れて、疲れて、疲れて(苦笑)。セミファイナルの2戦でさえ脚がつっていたのに、ファイナルで5戦もやるなんて…(苦笑)。でも、脚がつらないと言われているサポーター(ソックスタイプ)はファイナルまで履きませんでした。その時に効果が分かるように、我慢して履かなかったんです。あのサポーターは無駄な動きがなくて筋肉が揺れないからいいらしいんですよ。ファイナルに入って1戦目は右足だけ履きました。それで1戦目が終わった時に脚がつって、おぶってもらって帰るほどだったんですね。その時につったのは履いてないほうで。「やっぱり効くんだ!」と思いましたね。それで、格好悪いけれど両方履いちゃえ!って(笑)。でも私だけじゃなく、みんな脚がつっていましたよ。それほどすごい戦いでした。ソックスを履いてからはつらなくなりましたけど。

——日本航空とは2年連続の戦いでしたが、手応えはどうでしたか。

JALは強いですよ。李さんは5戦まで行ったら自分たちが強いって言っていたけれど、私は延びれば延びるほど分が悪いと思ってたんです。向こうがすごく練習しているのが分かっていたし、体力的にも分が悪いと。練習でJALのアジャスト(対応)をして動いただけでもすごく疲れるんですよ。あの動きを1試合やっているJALの体力はヤバイってことで、できれば3戦で終わりたいとみんなで言っていたんですよ。でも2試合目に負けた時に「3戦で終わらそうとしているからダメなんだな」と思いました。勝ち急ぐといいことがない。3試合で終わりたかったけれど、それができなかった時にダメージが大きくなるから、そのあとは考えないようにしました。

——前半で17点ビハインドのあった第3戦の逆転勝利が大きかったですね。

そうですね。ハーフタイムに「こんな試合をしていたら次につながらない」という話をしていました。この試合のあと1日空くといっても、1勝1敗の試合でもこんなに精神的に疲れているのに、ましてや負けたあとはもっと辛くて余計に戦えない。気力がなくなるのが怖かった。そこであきらめたら、優勝をあきらめたのと一緒だと思うんですよ。負けたら時の精神的な辛さを乗り越えてまた次を頑張るという、そこで使う気力のことを考えたら、そんなの辛すぎるから今を頑張ろうと。今、この3分に注ごうみたいな。試合中「この3分、この3分」ってつぶやいていました。

李さん(ヘッドコーチ)がよく言う言葉で「今日のない明日はない」っていうのがあるんです。日本語はおかしいんだけれど、うまいこと言うなと思って。今日のゲームを適当にやって、明日のゲームがメインだからって明日頑張ろうとしてもうまくいくわけない、と。今を頑張れなかった自分が次に頑張れるの? だったら今を頑張ろうってすごく思うんです。

——「負けることが辛い」と、身を持って知っている者の言葉ですね。

実はあの試合は3Qから泣きながらやっていたんですよ。辛くて、辛くて。転んだ時も「ああ、もう無理(涙)」とか思うんだけど後輩が「大丈夫ですか?」と来ると「大丈夫」って言っちゃうんですよ(笑)。本当はしんどいからもっと座っていたいんだけど、起こされるからやるしかなくて。泣きながら試合をしたのはじめてですね。あとから考えると笑っちゃうんですけど。でも本当に辛くて泣いちゃった(笑)

だけどあの試合は私じゃなくて、3Qで追い詰めた時のサラ(渡辺由夏)のバスカンとミラ(永田睦子)の3Pがなければダメでしたね。ファイナルでは本当にサラに助けられました。ミラは味方でもすごいと思う。「あいつはやっぱりエースだ」みたいな。脱帽でした。

——5戦目は河選手をスタートに入れて、落ち着いた試合運びをしていました。

5戦目は吹っ切れましたね。勝っても負けても最後というのがあったので。スカイ(河)という隠しているものを持っていたので、それでチャレンジしみようと。今まで先行されて追いかける形だったので、先行すれば今までと違う試合になるかなと思って。

——それまで前から当たっていたマンツーマンではなくて、終始ゾーンディフェンスでやり通しました。

あのゾーンはハッタリというか、脅かしのディフェンス(笑)。不思議なもので、ディフェンスがうまくいくとオフェンスも良くなるもの。スカイは膝が悪かったから、実際はハーフコートでしか練習ができなかったので、ラリーをしていなかったんです。本人が一番不安があったと思いますよ。でもやってくれた。それにJALのスクリーンにかからないようにするには、マンツーだったら後半脚が疲れてダメだったかもしれません。だったら5戦目はゾーンでいきたいと。それが成功しました。

——苦しい5戦を勝ち抜いての優勝。改めて思うことは何ですか?
 
優勝することがこんなにも大変で難しいのかと思いました。本当に長かったです。自分はコントロールする器用さがないので、1つ1つのシュートやリバウンドを頑張ったり、リズムを作ったり、声を出したり、そういう細かいことをやってきたのが報われたと思いました。あとは控えの子たちが、試合に出られなくても脚がつった時に手伝ってくれたり、声を出して応援してくれたり、練習相手になってくれたり、チームのためにできることを一生懸命にやってくれるんですよ。そういう姿に涙が出てきました。チームっていいなあと思いましたね。だから試合に出ている者は一生懸命にやるしかないです。

毎試合、毎試合、この試合を捨てたらどこかで(このツケが)出てくると思って、とにかく今に注ぎ込むしかないと思ってやってきました。今に力を注ぎ込めたことがリーグ戦の1位だったり、優勝だったのかなと思います。本当に頑張って良かったなあと思います。

質問コーナー(ホームページに寄せられた質問にお答えします!)

●どうすれば相澤選手のように綺麗で素速い3Pシュートが打てますか?

自分のシュートが綺麗だという気はしません(笑)。足は開いているし。でもそれでバランスを取っているんです。感覚で打っているというか。ただ「ジャンプシュートを速く打てるように」と高校(聖和学園)の小野先生に言われて、それは心がけています。速く見えるのはジャンプシュートで3Pを打っているからかな。練習で徐々に距離を延ばして、ジャンプシュートでも3Pが打てるようになりました。私のように小さい選手は2対1になった時にパスをしたければ、まずシュートを狙ったほうがいいと思います。そのほうがチェックに来てくれるからパスもしやすい。その距離をどんどん延ばして外に出てシュートを狙えば、パスもしやすいし、距離があるからドライブインもしやすいですよ。

●Wリーグで仲のいい選手は誰ですか?

シャンソン以外では富士通の子たちですね。船引のお姉ちゃん(かおり)や三谷(藍)、渡邉(由穂)、今はハイテクの磯山(絵美)。時々メールするのはトヨタのキコ(榊原)。あとテン(山田久美子、日立HT)がシャンソンで1年間だけ一緒だったんですけれど、今でもファイナル前にメールをくれるんですよ。それがありがたいですね。

●相澤さんと同年代です。気力、体力を保つ秘訣は何ですか?

基本的に負けず嫌いなんです。そこが一番のモチベーションですかね。その気持ちから「ああしてやろう、こうしてやろう」というのが生まれると思います。あとは何でも前向きに考えるようにしています。悔しいことがあっても「今はそういう時期なんだ。乗り越えよう」と。長い選手生活の中で、途中からそう思えるようになりました。

体力のことですけれど、最近は練習をやればやるほど疲れてバランスを崩しちゃうのもあって、李さんから自主練を止められることもあるんです。練習をしたくても出来ない葛藤があるんですよ。衰え始めた時に思ったのが「体力が落ちるんじゃなくて、回復力が落ちるんだな」と。無理をすればできるけれど、あとに残るというか。だから、自分の身体にすごく目を向けるようになりました。疲れたら休むこと、身体のケアをしっかりすること、自分の身体のためにやれることは全部やっています。

あとは自然と眠くなるんです。半日練習のあとも気がつくと夕方まで寝てしまったりして、自分でも「怖い!」と思う(笑)。移動のバスでも新幹線でもどこでも寝られる。よく眠ることが体力の秘訣かな。でも負けたあとの帰りのバスの中は眠れないんですよね。いろいろな場面が浮かんできて「あ〜悔しいっ!」となると、もう眠れない。だから負けると精神的にも体力的にも良くないですね(苦笑)

●「これをしている時が幸せ!」というものを教えてください。 

私、シャンソンの子たちに「アキバ系」って言われてるんです(笑)。機械とか詳しく知っているわけじゃないけれど、DVDを編集するのがすっごく好きなんですよ。それって、根詰めてすごく疲れるじゃないですか。トレーナーに「今日、オタク稼業やっていい?」と聞いて、「いいよ」と言われたらやるみたいな(笑)。それでも制限しているんですけれど。お笑いとか、韓国ドラマが好きなのでよく編集しています。ラベルまで作って完璧に。誰かに貸してって言われたら「いいよぉ〜!」みたいな(笑)。こんな自分、おかしいですか?

●将来はコーチになりたいと聞きました。どんなコーチになりたいですか?

高校生を教えてみたいですね。基礎も教えられて、次に発展させていくまでをやりたいです。バスケットって精神的なスポーツだと思うんですね。同じ相手と戦うのに、1日空いただけで差がついたり、入るシュートがいざという時に入らなかったり。それは精神的なものではないかと、いつの日からか思うようになって。精神的に強く打たれ強い選手、自分で管理できるような高校生を育ててみたい。アメとムチで(笑)

構成/小永吉陽子