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2012年10月18日(木)特集

みずからチャンスをつかんで前進してきたアイシン・エィ・ダブリュのキーマン

前田 有香選手(アイシン・エィ・ダブリュ ウィングス)

前田 有香

今回のゲストはアイシン・エィ・ダブリュ(以下アイシンAW)の前田有香選手です。ルーキー時代から積極的に起用され、今ではチームにとって欠かせない中心的存在に。高校、大学時代は、全国大会で目立つ成績こそありませんが、点取り屋として活躍。みずから「Wリーグでプレイしたい」と周囲にアピールし、大学での試合や練習に取り組む姿勢を評価してもらい、アイシンAW入団への道を切り拓いたという根性の持ち主です。山田かがりヘッドコーチも「前田が積極的に点を取りに行くことがカギ」と期待を寄せています。前田選手にアイシンAWのチームを分析してもらい、今シーズンにかける意気込みを語ってもらいました。

——2012-13シーズンが始まりましたが、序盤戦の手応えは?

6戦終わってまだ勝ててないけれど、このオフにやってきたことを信じて、チームが一丸となって、がむしゃらにやろうって気持ちになっています。結果はあとからついてくるものなので、今は練習してきたことを出すだけです。今シーズンはこの仲間たちと勝ちたいって、すごく思いながら試合しています。(10月14日現在)

——昨シーズンを振り返って反省すべき点は? そして、今シーズンの課題として取り組んでいることは?

ディフェンスからのブレイクで点を取るというのをやっているんですが、それができているときは流れが出てうまくいきますが、流れが悪くなったときに誰が率先して引っ張るか、というのができていませんでした。今年はそこで自分が得点を取れるように意識をしています。

ブレイクが出なかったのは、チームディフェンスができていないからだと思います。5人でひとつのボールを守ることは基本。その基本的なことができていなかったです。ボールマンのプレッシャーが弱かったり、逆サイドを見ていなかったり、ヘルプが弱かったり、穴が大きかったです。基本的なことがしっかりとできているときは得点にもつながったので、まずはチームでディフェンスを徹底することです。

——今まで勝ち切れない試合が多くて、下位にいることは悔しかったのでは。

はい。それはもう…。もう少し勝ち切れた試合もあると思うんです。一桁差で負けたとき、気持ちが下がったこともありましたけど、昨シーズンの終盤からは改善できている面も多いので、前を向いてやっていこうと思っています。昨シーズンよりはチーム全体の意識が変わってきているので、それを継続していきたいです。

——どんなふうに意識が変わってきているのですか?

今シーズンは、16人全員が「勝ちたい」という気持ちを持っています。今年からは鄭さん(チョン・ジュヒョン、韓国バスケ界の名将、元シャンソン化粧品ヘッドコーチ)に教わっていて「ディェンスが良くなってきた」と言われているので、手応えは出てきています。今シーズンは1クォーターを15点に抑えようと、数字の目標も明確になっています。

練習でもかがりさん(山田コーチ)に、ちょっとでもルーズなことをやると厳しく注意されます。最近とても思うのは「選手が練習を作っていく」ということ。これは、かがりさんにも言われてるんですけど、選手たちから自主的に変わっていくことが必要だと実感しているところです。

——前田選手は立命館大時代はインサイドプレーヤーでした。アイシンAWに入ってアウトサイドのポジションにコンバートしましたが、どのようにアウトサイドのプレイを身につけていったのですか。

アイシンAWに入ったときはセンターの動きしかわからず、3ポイントも打てませんでした。アイシンAWに来て、金さん(前ヘッドコーチのキム・ピョンオク氏)にアウトサイドのシュートを教えてもらって打つようになってから、ガラリと変わったんです。大学のときも上(WJBL)でやるなら2、3番のプレイはできなきゃダメだと思ってましたが、実際にコンバートできたのは金さんにシュートを徹底的に教えてもらってからです。

——ルーキー時代からスタメンで起用されていたので、大学時代からの短期間でコンバートできたことに、努力のあとを感じていました。

私が新人のときには、チームにはマックさん(小磯典子)、イツさん(島田智佐子)、ヨシさん(慶山真弓)と素晴らしい先輩方がいて、たくさんアドバイスをもらいました。特に同じポジションのイツさんにはシュートを学びました。1年目から金さんに使ってもらってうれしかったんですけど、そこは先輩の支えもあって思い切りできたと思います。あのときに先輩たちからもらったアドバイスを、今度は後輩に伝えていこうと思います。

——今シーズンのチームと自分の目標を聞かせてください。

チームの目標はひとつでも勝つことと、ひとつでも順位を上げることです。それにはチームディフェンスをすること。チームディフェンスをして、そこから走ってブレイクにつなげることです。あとは、シュートの確率を上げること。シュートは打っているけれど、パーセンテージが悪い。確実に取れる得点を増やしていきたいです。

自分としては、常に点を取りに行くこと。チームがいいときも悪い時も、自分が率先して得点に絡んでいきたい。「自分が得点を取って、チームを勝たせるんだ」という強い気持ちで試合に臨みます。


質問コーナー(ホームページに寄せられた質問にお答えします!)

●今までのキャリアの中で、いちばん印象に残っている試合は何ですか?

高校3年生のときのインターハイ予選の決勝です。私たちの高校(三重・津商)はそれまでインターハイには出ていなくて、自分が高校3年のときに初出場でした。その予選で自分は調子が悪くて自分の仕事ができなかったんですけど、周りの選手に助けられてインターハイ出場を決めることができました。このとき、やっぱりチームプレイは大切なんだなあ…と感じたことは忘れません。バスケットをやってきて良かったなと思った試合でした。

●オフに旅行に行くとしたら、どこに行きたいですか?

ヨーロッパに行ってみたいですね……。あ、やっぱりハワイかな。ハワイにしてください(笑)。ハワイの大自然の中でゆっくり過ごして、それから、たくさん買い物をして、リフレッシュしてみたいです。

●アイシンAWはどんな選手たちの集まりですか? バスケット以外でのチームの雰囲気を教えてください。

普段から先輩、後輩の厳しさがなくて仲がいいチームです。しょっちゅう、いろんなことに盛り上がっていて、いっぱい笑っていますね。笑いのセンスがあるのは髙崎ひとみ選手と佐藤朱華選手です。いつも2人でボケてツッこんで、周りにイジられています(笑)

●これだけは欠かせない、譲れない、という自分が好きなものは何ですか?

なんだろう…(と、しばし考えた末に)これは私だけじゃなく、チーム全体で流行っていることですが、白米のお供といいますか、ご飯の上にかけるトッピングが大流行中です(笑)。夕飯はチームのみんなで食べるのですが、そこで、それぞれが買ってきたご飯のお供を出して食べるんです。私が今いちばんハマっているのは松前漬け。地方に遠征に行くと、お菓子よりご飯のお供を買ってしまうくらいです(笑)。おかずと一緒に白米を食べて、ご飯のお供と一緒に白米も食べるので、みんなご飯を山盛り食べていますね(笑)

●憧れの選手、目標にしている選手はいますか?

島田智佐子(シャンソン化粧品→アイシンAW、元日本代表)さんです。私は大学時代まではセンターだったので、アイシンAWに入ったときにイツさんにフォワードやガードの動きを教えてもらいました。私が1年目でスタメンとして思い切り試合をすることができたのは、イツさんがうしろにいてくれたからです。私がダメなときに、イツさんがあとから交代で出てきて、流れを変えてくれました。ベテランの経験ってすごいなあ…と思いました。ずっと私の目標です。イツさんがいなければ今の自分はないと思います。イツさんのように、ほしいときに得点が取れる選手になるように頑張ります。

インタビュー&構成/小永吉陽子