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2005年8月1日(月)特集

心身ともにバージョンアップしたマックがWリーグに帰ってきた!

浜口 典子選手(アイシン・エィ・ダブリュ ウィングス)

浜口 典子

移籍プレイヤー特集第一弾! 今回はアテネ五輪から半年の休養を経てWリーグに帰ってきたマックこと浜口典子選手のインタビュー。浜口選手の魅力は何といっても心身ともにタフなこと。身体を張ってのディフェンスやセンタープレイ、誰よりも一番速く走るファーストブレイクなど、そのプレイは年を重ねるごとに輝きを増していました。そして、現役復帰した今は「人間の身体はどこまで有効的に使えるか」「年を重ねながらの技術的向上の開発」など、新境地に取り組みながら答えを導き出そうとしています。そんなバージョンアップを図っている浜口選手からは、多くの経験を乗り越えたからこそ言える言葉が返ってきました。

——浜口選手お帰りなさい! まず、Wリーグに復帰した理由から聞かせてもらえますか。

一つは、お世話になっているメンタル・トレーニングの白石豊先生から引退した時に「人が喜んでくれることをしなさい」と言われて、それで引退後はいろんなクリニックに出向いてバスケットを教えたら、たくさんの方が喜んでくれて。「こういうふうにバスケットで役立つ活動をしていけばいいんだ」と思ったんです。でも、だったら、現役の肩書きでこういう活動をしたら、より喜んでくれるんじゃないかなと思ったのが一つ。

もう一つは引退して何もしなかった半年の間に体調が悪くなってしまって…。原因は分からないんですけど、ストレスからなのか、体中にじんましんができてしまって「汗をかいて体を活性化しなきゃダメだ!」と思ったんです。それで、体重が増えた時に運動がしたくなってバスケットをやったんですよ。そうしたら本当に楽しくて! そういう気持ちを持てたのが大きかったですね。「バスケットは楽しい」と。

それでバスケットをやりたいけど、体調が悪いし持病の足首も痛いからムリかなと思ったんですよ。そうしたらお世話になっている整形外科のトレーナーさんに「身体を作ればできるよ」と言われてやる気が出ました。それに、オリンピック前から甲野(善紀)先生に習って古武術を取り入れていたので、それを試してみたいという気持ちが出てきました。

——そして、ファンにとっては一番「喜ばしい」現役復帰の道を選んだのですね。バスケットのことを様々な方向から考える時間が持てただけでも、有意義な休養でしたね。

本当はずっとバスケットをやれるだけやりたい気持ちはあったんですよ…。でも、オリンピックの頃は心身ともにいっぱい、いっぱいでしたね。でも今思うのは、あのままエナジー(JOMO)で30過ぎて能力ある子たちの中でやっていくよりは、今みたいな環境で「どうすればチームが上達するか」ということで悩んだほうが将来的にはプラスになるんじゃないかなと。だから、アイシンAWというチームで復帰したことに意味があるんだと思っています。

——今はもう体調は万全なんですか? どうやって元の身体に戻しているんですか?

ラリーに耐えられる体力というのはまだまだですけど、金さん(ヘッドコーチ)がうまいのは、私をゲームでフルに使って、楽しませながら体力を戻そうとしてくれるんですよ。サマーキャンプはケガをしたのでフルには出ていないんですけど、韓国遠征とか練習ゲームとかはフルにやりました。あとは食べる物に気を遣ったり、古武術を勉強してるんですけど、身体の使い方や、人間の最大有効範囲の中での動きを開発・研究しています。

——それはどんなふうにやっているのですか?

今、西洋人と東洋人の身体の違いに興味があるんですけど、トレーニングをいくらやってもアメリカ人にはかなわない。だけど日本人には繊細な技術があるじゃないですか。それをどうすればバスケットに生かせるかな、と。これはまだ企業秘密なんですけど、シュートも新しいのを研究しているし、フックシュートもバランスを崩しても打てるんだということが分かりかけてきました。今までは身体の張り合いで骨のきしむ思いをしてきたんですけど、そこをもっとうまくできないものかと思うんですよ。スポーツを一生懸命やって身体を壊すのはツライですよね。どんなにやっても身体を壊さないバスケットを開発したいなって気持ちが、三十過ぎてメラメラと出てきました(笑)

食べ物では、肉を食べない生活を送ってます。豆、イモ、大根、野菜などをしっかり食べて、ご飯も玄米や雑穀米を食べるようにしています。肉を食べないと身体が酸化しないみたいです。

——アシインAWではバージョンアップしたマックが見られそうですね。浜口選手から見てアイシンAWの印象は?

頑張っているけど、まだまだ。意識がぼんやりしている部分もあるというか。練習で追い込んでいないし、アップだけ見ても1部(Wリーグ)とは全然違うんです。そういうところを2年間でイツ(島田智佐子)さんやヨシ(慶山真弓)が変えていってくれました。でもまだ“死ぬか生きるかの戦い”という感覚が若い選手にはないんですよ。そこから変えていかないと。

——浜口選手のチームにおける役割は、そこを伝えることですね。

そうです。いきなり口で言ってもわからないと思うから結果を出しながら、ね。「ほら、こうやったら結果が出たでしょ」って。バスケットは楽しいものだけど、勝負は負けたら悔しいということを分かってほしいです。それを自分で気付かない限りはムリだから。

——では、目標を聞かせてください。

やっぱり1部昇格です。今のままでは大変だと思うけど、チームを育てながらやっていきたい。プレイングコーチとしては、きちんと伝えるべきことはチームに伝えて、金さん、加藤コーチ、伊藤コーチを手助けしながら、自分自身も勉強しながらやっていきたいです。

質問コーナー(ホームページに寄せられた質問にお答えします!)

●アイシンAWのチームには慣れましたか?

やっぱり入った時はお互いに気を遣いましたよね。でも、「マックさん」というキャラクターがあったから、すぐ慣れました(笑)。それにイツ(島田)さん、ヨシ(慶山)、リョウ(栗原)と、頑張っている顔見知りの選手も多いし、昔からお世話になっていたマサさん(加藤コーチ)、清美さん(津田、日本代表トレーナー)もいたし、教わるのは金さんだし、そんなに違和感なかったと思います。

●島田選手、慶山選手とはどんなプレイをしたいですか?

ヨシとはナショナルチームでもやったことがあるんですけど、私が5番でヨシが4番になるので、いいコンビネーションプレイができると思うので楽しみです。イツさんとは縁があって、世界ジュニア(93年、ベスト8)の時からの仲間だし、アジア大会で金メダルを獲った時も一緒でした。この2人がアイシンAWを上達させていこうとしたのが、入ってみて本当によく分かりました。この2人だけじゃなく、みんなでいいプレイをしていきたいですね。

●アイシンAWのユニフォームをはじめて着た時の感想は?

31歳にもなってバカみたいな感想なんですけど、小学生が入学式にはじめてランドセルを背負ったような、そんな気持ちでした(笑)。はじめてユニフォームを着た時はニヤけちゃいましたもん(笑)。「まだ現役できるんだー」「また試合に出られるー」って、うれしかったですね。

●安城の町には慣れましたか? 休みの日には何をしていますか?

はい。慣れましたよ。安城は特に何もないので、都会のわさわさしたところよりは落ち着きます。今の楽しみは休日にチームの子と喫茶店にモーニングを食べにいくこと。こっちのほうってモーニングが充実してるじゃないですか(名古屋は喫茶店のモーニングの発祥の地)。コーヒーを頼めばトーストがついてきたり、パンが食べ放題だったりするので。あとは、休日は都内に古武術を習いに行ったり、インソールの点検に行ったりしています。

●バスケットを終えたあとの将来の夢は何ですか?

(即答で)お母さんになりたい! それには結婚しないといけないですね(笑)。でもまずはアイシンAWを1部に上げないことには…ね(笑)。それに、今度はバスケットの技術を開発したいんですよ。それは1、2年じゃできないことだから、まだまだバスケを辞められないですよ!

構成/小永吉陽子