- 2005年1月20日(木)特集
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人生は一度きりだから今は苦労も試練も楽しんで経験したい
安谷屋 陽子選手(三菱電機 コアラーズ)
今回のゲストは三菱電機の司令塔・安谷屋陽子選手。安谷屋選手といえば沖縄の星。ミニバスで全国3位、全中では準優勝、全中オールスターでは沖縄を初優勝に導き、高校では九州制覇と、沖縄女子バスケ界を切り開いてきたプレイヤーであります。愛知学泉大でも日本一に貢献。4年時は準優勝だったものの、決勝戦で延長に持ち込む3Pを決め、代々木の観客を総立ちさせたエピソードも持っています。独特のパスセンスとドリブルワークは、ミニバス・中学時代のコーチである父の指導と、尊敬する兄(健太、元OSG)との1対1で鍛えたもの。世代交替を迎えた今季の三菱において、新たな試練に立ち向かう司令塔に直撃しました。
——今季の三菱は、世代交替を機に試練の年になっています。前半戦を終えて、手応えはどうですか?
開幕する前は主力の引退や、丸山のケガとかで「本当に大丈夫なのか!?」というヤバイ状況だったんですよ。「でも、やるしかない!」ということで、ディフェンスや基礎を頑張って練習して、開幕戦ではシャンソンに負けたけど、そのあと3連勝とかしちゃって、「やればできる!」って思ったんですね。でも、それがみんなの気の緩みとなって、そのあとの7連敗になっちゃったんですかね。最初の頃の必死さがないと自分たちでも気づいて、今はもう一度、基礎練習からやり直しています。
——勝てそうで勝てない試合が続いていますが、上位チームとの差は何だと思いますか?
原点に戻って必死にやれば、小さくて、そこそこのメンバーでもWリーグで戦えるっていうのは分かった。でも、上位チームには勝てない。けど、そこまで大差では負けない。上位にも下位にも接戦するし、どこのチームとやっても勝てない相手じゃないというか…。でもそこで負けるということは、何かが足りない。みんなで言っているのは、細かいミスが多いこと。ちょっとした合わせのミス、イージーシュートが多い。いくらディフェンスを頑張っても、ミスで点数が取れないところが、上位とは違うところだと思います。
——得点源の古賀、小岩選手が抜けたことで、安谷屋選手は今季は得点を取りにいくことを目標としてあげていました。実際はどうですか?
その辺が、今の個人的な悩みであって。今シーズン、最初に立てた目標は得点を取るということだったんですけど、点の取れるカズ(橋本)がガードとして入ったり、メンバー構成が変わったら、自分がボールを持つ機会も少なくなったんですよ。だから、アシストも去年より少ないし、言い訳かもしれないけど、点に絡むプレイができてない。自分は中途半端になってますね。点も取りたいけど、出ている5人をまとめなきゃとか、ディフェンスにも気を取られてるっていうか…。今はやっぱり、一番にガードとしてチームをまとめていかなきゃいけないのかなと。コアラーズのバスケットがまだ確立してないし、勝つためにはどうチームをまとめようかと、考えている段階です。
——思えば、安谷屋選手はミニ、中学、高校、大学、ジュニアと節目節目でキャプテンを務めていますね。三菱でも世代交替した年にキャプテンですし。
そうなんですよ。大学の時はヘッドコーチが変わった時で、三菱でも主力が抜けた時にキャプテンになって「ありえない!」と思ったこともあるけど…。でもある意味、いい経験です。最近すごく思うのが、バスケだけじゃなくて、たった一度の人生だから、つまらないより、楽しいとか苦しいとかそういうのが多いほうがいいかなと思って。平凡よりいろいろと経験していきたい。この20代は人生に一度きりだから、今はその大変さも楽しんでいるという感じです。逃げたら終わりです。少しは大人になりましたかね(笑)
——ところで、安谷屋選手といえば「沖縄」。Wリーグのプログラムには「沖縄再発見」が趣味と書いてあるし、「沖縄」のキーワードがたくさん出てきますね。
沖縄の良さを全国の人にアピールしたいわけですよ。使命感みたいな(笑)。住んでいる時は当たり前すぎて沖縄の良さがわからなかったし、大学に行ってもそうは思わなかったけど、ここ数年、ほんっとに沖縄大好き! オフに帰った時に車で遊びに行ったりして、自分の知らない沖縄をたくさん発見して、ますます好きになってますよ。オフの時は必ずチームメイトが遊びに来るので、コアラーズにも沖縄ファンはいっぱいいますよ。いろいろな人に沖縄に行って癒されてほしいです。沖縄いいですよ〜。
——最後に、今後のバスケットの目標を聞かせてください。
今シーズンの目標は「ベスト4」だったんですけど、この状況から考えて、今は1部(Wリーグ)に残留して、残りの試合を頑張って、少しでもチームカラーを確立すること。個人的には納得のいくまでバスケットをやりたい。でも、どこをどうすれば納得いくかっていうのは、まだ分からないんですよ。だから1年1年をしっかりやって、そのシーズンが終わった時に、次のことを考えればいいかなーと。あと何年やるとかは決めてないです。
将来は学校の先生になるのが小さい時からの夢なんですけど、それはあとからでもできるから、若いうちはできる限りバスケットをやろうと思います。Wリーグでできるのは何百人もいるわけじゃないし、このレベルでできることに感謝して。だから簡単には辞められないし、辞めたらもったいない。一度きりの人生だから、日本代表も目指したい。でも欲がないからダメなんですかねー。(身長が)小さいから練習するしかないと思っています。
質問コーナー(ホームページに寄せられた質問にお答えします!)
●どうしたら、安谷屋選手のように正確にビシッとパスが出せるのですか?
えー!! もっとうまくなりたいんですよー。でもパスは自分の特徴でもあるので、そう言われるとうれしいです。小さい頃から(コーチだった)お父さんに言われ続けてきたのが「必ず前を見て、視野を広く見るクセをつけろ」ということだったので、そういう訓練っていうか、意識はしてきました。課題にしているのは、小さいから常にプレッシャーかけられて視界をさえぎられてしまうので、ドリブルでズレを出したり、フェイクやピボットで角度をつけたりして、チャンスを作ること。そのチャンスで、ピンポイントにパスを出せるように心がけています。
●安谷屋選手がおすすめする沖縄のいいところ、観光スポットとは?
沖縄の良さはなんと言っても「海と空の青さ」「空気のきれいさ」「人の温かさ」「ゆったりした時間の流れ」ですかね。海の色なんてビックリするほどきれい! 前は気づかなかったけど、離れてみると、なんていい所だろうと思います。自分がよく行くのは東海岸かな。だいたいの人は西海岸のリゾート地に行くけど、家がある沖縄市からすぐ行ける伊計島とか浜比嘉島とか勝連半島とか、手軽に車で行ける離島なんでオススメですよ。あとはカフェめぐり。海沿いとか、山奥にいい感じのカフェがたくさんあるんです。沖縄のカフェは、ほんっと癒される!
●よく「沖縄の人は独特なバスケットをする」と言いますが、沖縄のバスケットとはどんなバスケットですか?
自分のモットーは「琉球魂」ということでバスケットをやっているんですが(笑)、沖縄の人は基本的に楽観的というか、みんな楽しんでバスケをやっていると思います。琉球魂っていうのは、沖縄の言葉で言うと「ゆいまーる」の心。「助け合い」という意味です。やっぱりバスケットは楽しいもの。義務感ではなくて笑顔でやりたい。
●何をしている時が一番幸せな時間ですか?
練習が終わって、長風呂している時ですね。音楽を聴きながら、湯船の中で雑誌を読んで、1時間くらい浸かって汗かいて、やっと1日が終わるって感じ。沖縄はシャワー社会なので、以前は湯船に浸かることは年に2、3回しかなかったんですよ。今では信じられない(笑)
●引退してからの夢はありますか? 以前バスケ雑誌で沖縄で教員になりたいっていうのを見たんですが。
その通りです。インタビューでも言った通り、ずっと学校の先生になりたいと思っていました。昔は先生と言えば「体育」しか思い浮かばなかったけど、愛知学泉大は家政科だったので、家庭科の教職を取りました。似合わないとみんなに言われます(笑)。採用試験を受ける時は沖縄に帰って勉強します。でも、いつになるか(笑)
構成/小永吉陽子