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2005年1月7日(金)特集

経験した今だから、分かることがあるそれを若い選手に伝えたい

島田 智佐子選手(アイシン・エィ・ダブリュ ウィングス)

島田 智佐子

今回のゲストはアイシンAWの島田智佐子選手。シャンソン化粧品で12年間、アイシンAWに移籍して2年。今年で14年目を迎えるベテランプレイヤーです。シャンソンでは足首の骨折や肩の脱臼という大ケガをしたこともあり、長年、控えとして経験を積んだ苦労人。現在は息の長いプレイヤーとして、読みのいいディフェンス、確率の高い3Pシュート、勝負強いゴール下など、オールウランドな活躍で若い選手のお手本となっています。98年に日本代表入り。アジア大会優勝の原動力となり、シドニー五輪予選にも出場。そんな豊富なキャリアを持つ島田選手ならではの話を聞くことができました。

——今のチームの調子、自分の調子はどうですか?

チームの調子は決していいとは言えないですね。でもこれは一気によくなることでもないので、チーム練習を積んでいくしかないです。先日、荏原に負けてしまって、そのあと絶対に負けられない東京海上には勝つことができましたが、今が一番しんどい時期だと思っています。でも私とヨシ(慶山)がAWに入って2年目で、チーム内の意識とか自覚とかは変わってきていると思うので、必ずいい方向にはいくと思います。

自分の調子は年齢が年齢なので、コンディションを万全にして臨めればいい感じですね。私の場合はプレイの出来以前にコンディションをキープすることが大切なので。昔、肩の亜脱臼をしてしまって、クセでよく外れてしまうんです。だから、特に肩のケアはします。

——アイシンAWに移籍して2年目。自分の役割をどうとらえていますか?

今のAWは、勝つことを意識して、常に目標をもって戦うことが必要で、入れ替え戦に出ることと、1部(Wリーグ)に上がるという目標に向かってやっています。そんな中で、どうやったら勝てるのか、勝つためには何が必要なのかということを教えたいですね。私自身はシャンソンの時に経験して身に染みて分かっていることがあるので、それを伝えて、勝てる方向に導いていくことが役割です。若い子たちは経験がないから知らないだけ。やればできる子たちなので、それが分かればいいチームになれると思います。

——島田選手は年齢は一番上だけど、シャンソン時代と変わらず、いや、シャンソンにいた時以上に果敢に攻めていますね。

みんなを生かそうと思ってやった頃もあったんですけど、私が攻め出すと、周りも攻めるようになるのが分かったというか、そういう経験があったので、周りを生かすだけじゃダメなんだなと思って。だからシャンソンの時より攻めているというのはありますね。

——やはり、今までやってきた“経験”は大きいですね。

はい。大きいです。ヨシにしてもそうなんですけど、私たちは経験したから知っていることってあるじゃないですか。でも若い子たちは、今経験している最中だと思うんです。たとえば「ディフェンスが大事だよ」と言っても、ディフェンスをどれだけ頑張ったら勝てるんだろうとか、ディフェンスを頑張ったら本当に勝てるのとか、その感覚が分からないと思うんです。だけど、ディフェンスが大事だと自分自身で経験して分かったら、1本のディフェンスを大切にすると思う。それが分かってないと、私がいくら「ディフェンスが大事」と言っても伝わり方が違うので。

私自身もここに来て分かったことがあるんです。ただその形をやったからといって経験になるんじゃなくて、それができるようになったから経験になるんだなということが分かったというか。それは、今まで自分が思っていた経験とは違うところでした。

——気がついたら、島田選手はWリーグではスタメンで出ている最年長選手ですね。

そうなんですよ(笑)。まさか、ここまでやるなんて思ってなかった(笑)

——現役を長く続けられる秘訣は何ですか?

なんだろう。やっぱりバスケットが好きなことが一番だし、辞めることはいつでもできると思うので。現役でいられる年って限られているじゃないですか。自分で本当に納得できるまで、まだやりたいなという気持ちだとか、チームが必要としてくれるうちは、やりたくなるんですよね。「毎年、今年で終わろう」と思って、かれこれ何年みたいなところはあるんですけど(笑)。なんでしょうね。あきらめが悪いのか、しぶとい性格なのか(笑)。バスケットって経験のスポーツで、体はしんどいんだけど、やればやるほど本当に面白いなと思えるんです。それを面白いなと思える間は続けられると思います。

——まだバリバリやってもらいたいので、辞める話は置いといて(笑)、今、話が出た「やればやるほど面白い」というのは、どんなところですか?

若い子に注意したことが、次にはできるようになって、それでコンビネーションプレイができたりするとうれしいですね。「できたね、それ、それ、それ!」っていう時かな。

——最後に目標を聞かせてください。

ありきたりかもしれないけど、一試合ずつ大事に全力で戦って、1部に上がること。一戦一戦大事に戦うから先があるということを、チームの若い子に伝えたいですね。自分はそのためにAWに来たので。

質問コーナー(ホームページに寄せられた質問にお答えします!)

●長く現役生活を続けていますが、日常生活で制約されていることはありますか?

ないですよ〜(笑)。眠れない時やストレス発散の時は、よく飲みに行くし(笑)。飲みに行くのは休日の前ですね。飲んでしゃべって発散します。放っておいても暴飲暴食してしまうので、ほんと、制約していることってないですよ。ただ、疲れると体重が減って食べられなくなってしまうので、体重が落ちた時は食べることを意識するくらいかな。

●思い出のゲームとその理由を教えてください。

シャンソン時代はいっつもベンチで優勝の瞬間を味わっていたんですが、スタメンになってからの優勝は格別でしたね。「コートで味わう優勝って違うなあ」と感激したことを覚えています。ナショナルでは、優勝したアジア大会かな。決勝の中国戦にPGで出たんですよ。予選の中国戦で勝った時にサン(楠田香穂里)がケガをしてしまって。その変わりだったんですけど、私がPGで出て負けたら申し訳ないと思って「今やらなきゃ、いつやるんだー!」と、すごい気持ちを持ってやりましたね。そうしたら、いい形でシュートが入って走れました。みんなで協力して勝ったうれしい試合です。

●今、ケガをしてへこんでいます。島田さんはケガを乗り越えたと聞きました。どうやって乗り越えてきたのですか。

その気持ち、よくわかります。私は4年目で足首の骨折、6年目で肩の亜脱臼をやってしまいました。特に辛かったのが4年目。結果も出てないのにケガをしてしまい、精神的に落ちるところまで落ちました。でも逃げる勇気もなくて、自分を変えたくてしょうがなかったです。今思えば、その時逃げないで辛いリハビリや練習を乗り越えたから今があるんだと思います。現状を考えると辛いけど、いつか「あの時頑張ったから」と思える時が来る。逃げればそれが自分に返ってきます。自分から逃げないで、信じて頑張ってください。

●好きなこと、楽しいことはなんですか?

休みの日の健康ランド! お風呂に入ってマッサージを受けている時が幸せですね〜。あと、時間ができたら韓国にバスケを見に行きたい。韓国バスケにはハマりました。速さ、独特な感覚とか、見ていてほんと面白いです。引退したと聞いて残念なんですが、カン・ドンヒ(元男子代表のPG)のプレイが大好きでした。もう一度見たいですね。

●バスケットを引退したあとの夢はありますか?

ちゃんと考えているわけじゃないんですけど…。AWで若い子に教えて、その子がちょっとできたりすると、「私が学んだことを、若い子たちに伝えられたら楽しいかなー」とも思うし。でも実際には、コーチとかは考えてなくて、そんな余裕もないんですけど。ただ、教えることは楽しいですね。まあ、それはバスケから離れてみてからゆっくり考えます(笑)

構成/小永吉陽子