NEWSニュース

2014年4月28日(月)特集

163㎝のポイントゲッター「林先生のバスケを表現できて楽しかった」

金原 沙織選手(山梨クィーンビーズ)

金原 沙織

今回のゲストは山梨のポイントゲッター金原沙織選手です。4シーズン目の今季は名将・林永甫ヘッドコーチのもと、ポイントガードから2〜3番のポジションに転向。果敢なドライブインを中心に、平均13.62得点(リーグ7位)を叩き出し、山梨の得点源として活躍。昨シーズンはフリースロー賞(94.29%)を受賞するなど、得点意欲のあるプレイヤーです。精華女子高時代は全国大会の出場経験がありませんが、関西外語大ではチームを2部から1部へと引き上げ、4年時にはインカレ6位まで上昇させた経歴を持つ選手。今季限りでWリーグからの撤退が決定している山梨ですが、林永甫ヘッドコーチのもとでチームは確実に成長し、その姿はファンの目にもやきつきました。チームの得点源として活躍した金原選手に、成長を遂げた今シーズンを振り返ってもらいました。

——今シーズンは山梨として最後の戦いでした。最終戦を終えた気持ちは?

最後の試合前は、林先生(林永甫、イム・ヨンボ ヘッドコーチ)が来てから1年間教わったことを勝ち負け関係なく出そうと全員で臨んだんですけど、結果としては最終的に三菱に離されて負けてしまいました。

ですが、たくさんのお客さんに来てもらえたので、林生のバスケの楽しさが伝わったと感じることができました。負けてしまったことに悔いはあるんですけれど、バスケを教えてくれた林先生に対しても、ファンの方々に対しても、最後はやり切れたと思います。

——林ヘッドコーチに教わったこの1年、チームがとても伸びたと思います。昨シーズンの0勝22敗から2勝31勝になり、敗れはしても接戦が多くなりました。どのように手応えを感じていますか。

林先生が来てから本当に変わったと思います。練習では基礎の基礎からやり直して先生のバスケをゼロから教わりました。練習では365日怒鳴り声もあるし、ケンカしそうな勢いの中で練習したことも度々あったんですけど、先生が本当に私たちのことを考えてくれていたので、ついていくことができました。

試合を重ねるごとに練習したプレイが出せて、林先生のバスケがだんだんと表現できるようになり、山梨のファンが増えていったことを感じていたので、私たちが一生懸命やったことは結果として出せたと思うので充実したシーズンでした。

——基礎の基礎とはどういう部分から練習したのですか。

体の使い方や膝の曲げ方、キックとストップ、強弱をつけた走り方……何から何まで教わりました。林先生としては本当はもっと細かく教えたかったと思うんですけど、「時間がないから早く上達しなければ間に合わない」とおっしゃっていて、最低限の基本を指導してくれた感じです。

チームプレイではスクリーンを使ってエイトクロスをやるんですが、スクリーンの角度が5度でも、5㎝でも、10㎝でも違ったらそのたびに止められて注意されました。私たちはちゃんとやっていると思っていても、林先生からしたら違うみたいで、最初はその違いがわからなかったです。

——林ヘッドコーチの注意する意味がわかってきたのはいつ頃でしたか?

最初の頃は怒られながらも、ただただ一生懸命やるだけでした。シーズンの途中からディフェンスが見えてくるようになって、状況判断が少しずつできるようになってきてから、だんだんと先生の言う意味が理解できるようになりました。一つのプレイが成功すると、「先生が言ってたことはこのことか!」と林先生のバスケがだんだんわかっていく感覚がありました。

シーズンを戦っていて、だんだんとわかってくる瞬間が多くなってきて、最後のほうは自分たちで考えてやれるようになってきました。それでも林先生の求める動きには100分の1くらいしか達してないと思います。だんだん自分たちで考えてやれるようになってきたので、もっと林先生のバスケをやりたかったです。

——林ヘッドコーチの教えで心に残っていることはどんなことですか。

バスケットの練習もそうなんですが、いちばん言われたのは「人間的な成長がなければバスケットはうまくならない」という、意識改革のことを言われ続けました。意識改革をしたことによって、チームが一つになったと思います。

——意識改革について行ってきたことを、具体的に教えてください。

今まで負け続け続けてきたチームだったので、考え方も負け癖がついていたし、途中であきらめてしまったり、このくらいでいいやと思ってしまったことが、自然に習慣になって出ていました。その悪い部分を「何が何でも成功させる」という思考に変え、「勝つために何をしなければならないか自分で考えろ」ということを言われて、自分たちで考える日々でした。

——1リーグ制になって2シーズン目。昨シーズン最下位だった山梨としては、上位チームと対戦しての手応えをどう感じていましたか。

大差で負けた試合は身長のハンデや実力差を感じましたが、競って負けた試合もあり、チームとしては、試合の中でいいプレイを作ることが毎試合出てきたので、これを続けていけばもっとうまくなれるという手応えはありました。自分自身は結論から言うと、林先生から教わってきたことは全部は出せませんでした。今シーズンからフォワードに転向して点を取ることを要求された中で、相手のディフェンスを見ても判断できないところがあったのは課題でした。

——残念ながら山梨は今季でWリーグの活動は休止します。今後の金原選手の動向、そしてこれからの目標を聞かせてください。

今シーズンを振り返ると、チーム全員で林先生の目指すバスケットに取り組むことができて、チームが一つになり、いろんな発見もあり、バスケットがとても楽しかったです。今後のことはまだ決めていないので、これからしっかりと考えたいと思います。


質問コーナー(ホームページに寄せられた質問にお答えします!)


●コートネーム「ヨオ」の由来を教えてください。

山梨に入部した年に、島立(登志和)代表が考えてくださいました。全員のコートネームを島立代表が考えてくれたのですが、私の場合は「意気揚々とプレイするように」の「意気揚々」から取って「ヨオ」になりました。

●金原選手はドライブをガンガン仕掛ける選手ですが、小さくても攻めるコツを教えてください。

攻めるコツですか、そうですね……(しばし考える)。あまり考えたことがなかったです。むしろ林先生には「攻めろ!」と怒られてばかりでした。それでも心掛けていたのは、身長が小さいので大きい人より早く動くこと。自分のディフェンスをよく見て、ボールのもらい方で自分のディフェンスとズレを作ること。ボールをもらう前の駆け引きからが勝負だと教わりました。林先生にアドバイスをもらってから、ディフェンスをよく見るようになりました。

●山梨はどんなチームですか? 面白いエピソードがあったら教えてください。

楽しいチームですよ。チーム内ではしゃいでいるのは長内(ほのか)と藤澤(未希)ですかね。エピソードですか…なんだろう?(しばし考える)誕生日には必ずパイ投げをすることですかね。誕生日の選手にバレないようにドッキリを仕掛けて驚かせて、暗闇になった瞬間にパイ投げをします。ドッキリを仕掛けるリーダーは柘植(由美子)さんです(笑)

●性格自己分析をお願いします。

よく言われるのはマイペースと天然なんですが…。どっちも自分では違うと思うんです。自分で思う自分の性格は大ざっぱです。人が気になるようなことが気になりません(笑)

あと、私はたいていのことは怒らないと思います。林先生に怒らて、自分では「何クソ!」と顔に出して怒っているつもりでも、みんなには怒ってないとか、悔しそうに見えないとよく言われるんです。

(「話し方がとてもおっとりしているので、大ざっぱというより、大らかな性格に見えます」と言うと)そうなんでしょうか。本当はとっても大ざっぱな性格なんですけど、よく言えば、大らか…ということにしておいてください(笑)

●来季は山梨の試合がWリーグで観戦できなくてとても残念です。「今シーズン限り」との発表を聞いてからはどんな気持ちで戦っていたのでしょうか。

私の場合は1年1年が勝負で、常に今年が最後かも…と思って臨んでいたので、チームがなくなると聞いたときはショックでしたが、現実は変わらないので、そのことをしっかりと受け止めようと思いました。そのうえで、やることはしっかりやろうとプレイしていました。昨シーズンは1勝もできなかったので、今シーズンは林先生のバスケを一生懸命にやって山梨の方に勝利をプレゼントしたい気持ちでプレイしていました。林先生のバスケをもっとやりたかったです。


インタビュー&構成/小永吉陽子