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2015年3月21日(土)特集

Wリーグ10年目の誓いと信念「先輩から受け継いだバスケを若手に伝えたい」

鈴木 一実選手(トヨタ自動車 アンテロープス)

鈴木 一実

今回のゲストは10年目のシーズンを迎えるトヨタ自動車のキャプテン鈴木一実選手です。パワフルなプレーを持ち味とし、ここ一番での3ポイントとアグレッシブさを持つ選手。今季は従来のフォワードからインサイドプレーヤーへと転向し、これまで以上にリバウンドやブロックショットでの意欲が光っています。今季のトヨタ自動車は多くの若手選手が台頭。そんな中でリーダーシップの面でも、プレーの面でも新たなチャレンジを迎え、自分自身の言葉でしっかりと答える姿からは、信念の強さが伝わってきます。キャプテンの鈴木選手に今シーズンの手応え、そしてプレーオフに臨む心境を聞きました。

——順位を争っていたシャンソン化粧品に連勝した試合(2月21〜22日)が、プレーオフ進出の決め手となりましたが、シャンソン戦を振り返っていただけますか。

シャンソン戦は「絶対に勝つ!」という気持ちの中で、チームが噛み合って勢いがありました。逆に、その次の富士通戦にも絶対に勝とうというムードはあったんですけど、シャンソン戦に比べて前向きじゃなかったところがあります。空回りして人任せになって、向こうに流れを持っていかれました。特に、ディフェンスのコミュニケーションミスが目立ちました。シャンソン戦には勝ちましたが、富士通戦に負けたことのほうが悔しいです。

——今シーズンはルーキーの台頭も目立ち若返ったシーズンですが、トヨタの良さはどんな展開ができた時でしたか。

リバウンドを取って走ることがカラーなので、それが出た試合はほとんど勝っています。

——課題だったことは?

ブレイクが出なかった時はトヨタの流れではないですね。うちはそんなに大きくないので、ディフェンスとリバウンドを頑張らないと厳しい。もっと走らないといけないし、もっとスピードを出さないといけない。あとは気持ちの問題です。前半と後半がまったく違うチームになる試合があるので、そうならないように集中しなければなりません。

——レギュラーシーズン4位という結果については、どう感じていますか。

シーズン前からある程度、苦しいシーズンになるという予想はついていたので、とにかく、ベスト4に残ってセミファイナルに進出できたことはよかったです。

——予想がついていたというのはどういう点ですか?

若手が多く出てきたこともあるし、キラさん(池田麻美)が引退して自分がインサイドにコンバートしたことで、プレーが安定せずに苦戦することは予想していました。私自身、後藤さん(ヘッドコーチ)に要求されていることは「インサイドもやって、3ポイントも決めてオールラウンドに」ということ。でも、自分の納得いくレベルにはなっていません。もっともっと幅広いプレーをやらないといけないです。でも、そんな中でたくさん若手が出てきての4位だったので、チームが成長していると感じています。

——今年のオールジャパン、去年のWリーグプレーオフはセミファイナルで敗退。ここ数年間、オールジャパンもWリーグでもファイナルに進出していたことを思えば、もう一歩の壁が超えられませんでした。何が足りなかったと感じていますか。

今シーズンで考えたら、近藤(楓)や水島(沙紀)という若手が頑張ってくれたのに、経験のあるベテランが乗っかっていけていない。若手が頑張ってくれているのに、逆にベテランが何をやっているんだ、というのがあります。最後の詰めの部分、やるべきところでベテランがやらなきゃいけないし、もっとチームを引っ張っていかなきゃいけない。やるべき人が全然やれていないのが踏ん張れていない理由です。それは自分を含めて、反省すべきところです。若手とベテランの噛み合いがなかなかうまくいかなかったので、そこがマッチしたら強いと思うのですが。

——それは言い換えると、若手が伸びてきて、選手層が厚くなっているところだと言えますよね。

そうです。数年前、チョンさん(チョン・ヘイルHC)がいた時は主力が固定されていて控えとの差があったんですが、今は若手で個性ある選手が伸びてきました。若手が伸びてきたことはいいことですが、それに対して経験ある選手が中途半端になってしまうと、あと一歩、あと二歩と前に出ていくような展開にならない。チョンさんがやってきたものを引き継いで後藤さんのスタイルになったのが今のトヨタなので、若手とベテランの噛み合いがポイントだと思います。

——初のキャプテンとして、自分自身のやるべきことをどう捉えていますか?

この10年間、私がトヨタに入ってからプレーオフに行けなかったことは一度もないんですね。必ずベスト4に進出しているのです。先輩たちが築いて、積み上げてきた歴史を自分がキャプテンになって傷つけたくなかった。ベスト4に行けるかどうかがかかった終盤の試合は、本当にその気持ちだけでやってきました。

キラさんからは何度も「チームを引っ張るのはオウしかいない」と励ましてもらいました。チョンさんが作ったものを後藤さんが引き継いで、キコさん(榊原紀子)やキラさんや多くの先輩たちが結果を残してくれて、それを崩しちゃいけないという思いは本当に強いです。これまでやってきたトヨタのバスケットを今は若手に伝えていく時だと思っています。私がキャプテンとしてできることといえば、これまで築き上げたものを踏ん張って引き継いでいくこと。若手には私の背中を見てその思いを感じてほしいし、伝えていきたいです。

——JX-ENEOSとのセミファイナルのカギとなることは?

後藤さんには私が先頭を切ってオールラウンドにやってほしいと要求されているので、その部分だと思います。JX-ENEOSは大きいので、自分は小さいですけど、インサイドを抑えつつ、3ポイントを打たないといけません。JX-ENEOSのインサイドからどれだけファウルがもらえるかがポイント。大きい選手は小さい選手にやられるとイヤだと思うので、そこで突いていきたいです。

——プレーオフに向けての抱負を聞かせてください。

若い選手が多くなった中でどういう試合ができるか楽しみでもあります。そこで、しっかりとベテランたちが仕事をすることが大事。準備しているディフェンスがあるので、それをいかに出せるか。個人的には大事な場面で踏ん張って、やるべきところで自分の仕事をしっかりとやって勝ちたいです!


インタビュー・構成/小永吉陽子